27日に最終回だった人気ドラマ「ドラゴン桜」は、元暴走族の弁護士による熱血指導の下、家族や周囲から「無理だ」、「あきらめろ」と言われても東京大学合格を目指す高校生たちの物語でした。私も今から30年以上前に高校野球をやりながら東大を目指し、浪人して家族に苦労をかけ、なんとか合格したことを懐かしく思い出しながら、見ていました。
東大受験で最も大変だったのが、文章で答える「記述式問題」が多かったことです。時間に追われ、なんとか答案用紙を埋めるのですが、試験後は自分が書いた内容もよく覚えておらず、模範解答の意味もよく理解できないことがありました。結果、模擬試験や本番で自己採点をしても実際の点数とずれることが多く、何度も落胆させられました。
一昨年の秋まで、文科省は、このような記述式問題を各大学の入試だけでなく、50万人もの受験生が一斉に受ける「共通テスト」に導入する方針でした。しかし、併せて導入予定だった「英語民間試験」につき、私たち野党が地方の受験生や経済的に恵まれない受験生が不利になると国会で指摘し、萩生田文科大臣が「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」と発言したため、急速に反対世論が強まり延期。その直後に「記述式問題」も延期となりました。
その後、外部の有識者や高校・大学の関係者18名から成る「大学入試のあり方に関する検討会議」が1年半にわたって議論を重ね、30日、「記述式問題」や「英語民間試験」を共通テストに導入することは困難とする提言案をまとめました。これを踏まえ、文科省も導入を断念する方向です。提言案では、「記述式問題」が導入困難な理由として、私が昔感じていた「採点結果と自己採点の不一致」のほか、正確な採点とそれができる採点者の確保の難しさ、採点に時間がかかることによる入試の混乱などが挙げられています。大学へのアンケート結果でも国公立の9割、私立の8割が導入反対で、もっともな結論でした。
同時に提言案は、「自らの考えを論理的・創造的に形成する能力」や「思考・判断の過程や結果を的確に表現する能力」を見る上で「記述式問題」は有効とし、共通テストではなく各大学の入試での出題を促進すべきとしています。確かにこれらの能力を身につけるのは大変ですが、大学での学びにとってのみならず、社会に出てからも極めて重要です。
自らの考えを論理的・創造的に形成し、その過程や結果を的確に表現する力があれば、周囲を説得し、納得してもらえます。そうすれば自分のやりたいことができる、あるいは他人に協力してもらえる可能性が高くなります。受験生の「身の丈」に合った大学入試ではなく、「身の丈」を伸ばすための大学入試とするため、今回の提言案を生かして入試制度の改善が図られるべきです。次世代のため、私も知恵を出していきたいと思います。