東京オリンピックが開幕する7月23日まで残り2か月を切る中、米国は自国民に日本への渡航中止を勧告し、東京をはじめ9都道府県の緊急事態宣言が6月20日まで延長されました。通常の新型コロナの2倍の感染力があるというインド型の変異株の感染者が国内でも増えてきました。現時点でワクチンを2回接種し終わった方は国民の3%程度です。

 

この状況で東京オリンピックを開催し海外から多くの人が来日して期間中滞在したら、ますます感染が拡大してしまうのではないか。誰しもそう思うはずです。これに対し、菅首相は、呪文のように「安全・安心な大会となるよう取り組みます」と言い続けています。その理由として、政府は「バブル」方式を取ることで感染拡大が防げるかのような説明をします。

 

そもそも「バブル」方式とは、選手や関係者を泡(バブル)のように包み込み、外部の人との接触を遮断するやり方を意味します。昨年来、体操などいくつかの国際大会で採用されてきました。しかし、東京オリンピックやパラリンピックで来日する外国の選手団は1万5千人、役員やスポンサー、マスコミなどの関係者は7万8千人に上ります。これまでの個別競技の国際大会とは、人数も国の数も桁違いです。

しかも、バブルで包み込まれるのは選手と監督、コーチ、トレーナーなど一部の人たちです。7万8千人の大半はバブルの外で、その人たちは来日から3日間はホテルに待機、14日間は競技会場など限られた場所にしか行けないことになっています。ただ、これを確実に実行させる仕組みはなく、例外も認められています。要は、本人の自覚に委ねるしかないのです。

また、バブルの中の人たちは大半がワクチンを接種する見込みですが、ワクチンは発症を防ぐものであって、感染を防ぐことは困難です。その人たちが感染し、別の人に移す危険もあるということです。東京とそれ以外の競技会場でのボランティアの募集人数は、5万人以上になります。今のペースだとこの方たちがオリンピックまでにワクチンを接種できる可能性は低く、競技会場で海外から来た人たちと接し、感染する危険は否めません。

聞けば聞くほど「安全・安心」というより「危険・不安」に思えてきます。私は、30年前に社会人となり、その直後にバブル経済がはじけて勤め先の銀行が経営破綻したという苦い経験があります。「バブル」を信じて突き進む金融のもろさを、身に染みて感じました。

菅首相が語る「安全・安心」も、まさに「バブル」に依存するものです。東京オリンピックやパラリンピックの「安全・安心」が確実なものなら、開催は可能だと思います。しかし、実体が伴わない、いい加減なものを信じてオリパラに突き進むのは、明らかに誤りです。