3日の衆議院本会議では、前の経済産業大臣で自民党の衆議院議員を6期17年半にわたり務めた菅原一秀代議士の辞職が許可されました。菅原氏については、公職選挙法違反の罪で、東京地検特捜部が近く略式起訴を行い、罰金刑を科す方針のようです。

菅原氏の他にも、この半年間に刑事事件で訴追されて辞職した自民党議員は、収賄罪で起訴された吉川貴盛・元農水大臣、選挙買収罪で起訴された河井克行・元法務大臣とその夫人である河井案里氏と3人もいます。いずれの議員も、辞職の際に公の場で辞職の原因となった行為や自らの責任について語ることなく、「無言の退場」となりました。

立憲民主党は、辞職を許可する前に「政治倫理審査会」を開き、国会の場で本人に説明させるべきと主張しましたが、自民党はこれに応ぜず無条件で辞職を認めてきました。「政治倫理審査会」は、ロッキード事件などをきっかけに国会議員が守るべき政治倫理の確立が強く求められるようになったことから、昭和60年に衆議院、参議院のそれぞれに置かれました。

同じ時期に「政治倫理綱領」も定められ、国会議員は、政治倫理に反す疑いが生じた場合には「みずから真摯な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない」という規定が設けられました。「疑惑の解明」と「責任の明確化」のために政治倫理審査会を開き、問題が生じた議員から説明を受けることになっています。

ところが、議員辞職が認められた瞬間から、政治倫理審査会で説明を求めることはできなくなってしまいます。本人の申し出を受けて即座に議員辞職を許可するという自民党の姿勢は、「臭い物に蓋をする」ことにほかなりません。自民党の二階俊博幹事長は「きれいになっている」と発言しましたが、汚れはたまる一方です。

一方、疑惑を受けた議員は、記者会見で説明責任を果たすこともできます。しかし、上記の4人は、辞職に際して簡単なコメントを発表しただけでした。女子テニスの大阪なおみ選手は、世界4大大会の一つである全仏オープンの記者会見を拒否したことで1万5千ドル(約165万円)の罰金が科されました。ケガや体の不調でない限り、勝敗に関係なく記者会見に参加しなければならないという4大大会の規則に反したため、だそうです。

スポーツ選手以上に公的な存在である国会議員については、公の場で疑惑に関する質問に答え、説明責任を果たす責任があります。現状では、これを怠った場合でも1円も罰金が科せられません。それどころか、国会を欠席していた期間も含めて満額の報酬がもらえることになっています。立憲民主党では、これを改めるための法案を準備しています。