「5月18日」という日付は、私にとって生涯忘れられないものになりました。昨年の「検察庁法改正案」、そして今年の「入管法改正案」のいずれの法案についても、この日に政府が成立を断念したからです。両法案とも法務省が所管しており、私は法務委員会の野党筆頭理事として法案の欠陥を指摘し、成立させるべきではないと主張していました。

結果は同じですが、昨年の「検察庁法改正案」は、著名人がSNSで反対を表明したり、「主役」である黒川元検事長の賭け麻雀スキャンダルが発覚したりしたため、反対世論が強まって安倍政権も成立を断念せざるを得なくなったという事情がありました。今年の「入管法改正案」ではそこまでの世論の盛り上がりはなかったように思います。

しかしながら、今年は昨年以上に、政府に対する野党議員の追及は厳しく、粘り強いものがありました。名古屋入管でスリランカ人女性のウィシュマさんが病死した問題について、内部調査の問題点を多数指摘。ご遺族と法務委員会の理事らに対し、法案を通す前に入管施設内でのウィシュマさんのビデオ映像を開示するよう、法務大臣に強く求めてきました。

法務大臣は、ビデオ映像を見せると、①施設の設備や形状等が明らかになって保安上問題がある、②亡くなったウィシュマさんの名誉と尊厳を害する、③その後の国会でのやり取りが進行中の内部調査に先入観を与えてしまう、という三つの理由を挙げて拒み続けました。

しかし、①は過去に法務委員会の理事に刑務所内のビデオを見せた例もあり、理由になりません、②、③については、内部調査の「中間報告」自体にウィシュマさんが病状について嘘を言っていたかのような記載があり、それ自体が彼女の名誉と尊厳を害し、先入観を与えるものでした。自らを棚に上げ、国会の行政監視を軽んずる態度は許せません。

それでもなおビデオ開示を拒み、法案の採決をしようとする政府与党に対し、私たち立憲民主党などが法務委員長の解任決議案を提出。18日の衆議院本会議では、葬儀のために来日したウィシュマさんのご遺族が見守る中で、私が解任を求める理由について演説を行う予定でした。しかし、その直前に政府与党が法案成立を断念し、私の演説は幻となりました。

想定外の結果でしたが、「数の力」で圧倒的に劣る野党が、「理の力」で政府の暴走を食い止めました。ちなみに昨年の「検察庁法改正案」は、当時私が提案していた内容でもうすぐ成立しそうです。今年の「入管法改正案」も、ウィシュマさんの死を無駄にしないよう、まずは真相解明をしっかり行った上で再発防止につながる改正を提案したいと思います。14日の修正協議の結果も活かしながら、単なる廃案ではなく「建設的廃案」にしていきます。