160527 復興特別委員会写真3 衆議院の東日本大震災復興特別委員会では、22、23日と岩手沿岸北部の視察を行いました。同委員会がこの地域を訪ねたのは今回が初めてでした。国会会期中は日帰りの視察しかできないという衆議院のルールがあったためです。今回は、野党筆頭理事である私と与党側の理事らで合意し、特別に議院運営委員会の許可を得た上で視察を行いました。

久慈市では、がんに侵されながら地域経済再生のために新事業に挑戦する経営者にお会いし、田野畑村では、壊滅した集落を再建し、今も人口減少と闘っている方々の要望を伺いました。印象深かったのは、野田村の保育園です。津波で施設は全て流されましたが、90人近い園児は800メートルほど離れた避難場所まで全員避難して無事でした。

IMAG0029なぜ、あの緊急事態において、幼い園児たちはパニックにならず避難できたのか?園長先生らによると、平成17年に津波の浸水予想区域が見直されて以来、危険区域にある同園では毎月3回も避難訓練を行ってきたとのこと。しかも、地震から津波が到達するまでの短い時間に避難が完了できるよう、早足で歩く訓練や、地主の許可を得て私有地を横切って通る訓練もしていたとのことです。日頃の訓練の重要性を改めて感じました。

一方で、自民党が憲法改正草案に盛り込んでいる緊急事態条項では、いざという時に内閣総理大臣が地方自治体の長に指示をしたり、国民の権利、自由を制限したりできるようになっています。これでは、せっかくの防災訓練の成果も生かしきれず、また、そもそも平時において訓練を怠ることにもつながりかねません。27日の復興特別委員会で、河野防災担当大臣に緊急事態条項の危険性を指摘して尋ねたところ、「災害のときに、何が適切かはケースバイケース」、「まず自ら、あるいは地域でしっかり災害に備えるのが大事」と答弁し、現場の準備や判断の重要性を認めました。

また、憲法公布直後に内閣が発行した「新憲法の解説」には、明治憲法下で緊急勅令などの緊急事態の制度が濫用されがちだった反省に立ち、「新憲法はあくまでも民主政治の本義に徹し、」「臨時の必要が起れば必ずその都度臨時国会を召集し、又は参議院の緊急集会を求めて」対処するようにした旨の記述があります。そこで、「(緊急事態条項がなくても)臨時国会か参議院の緊急集会で大規模災害に対応できるのではないか」と問うと、

河野大臣は、「これまで我々が経験したような災害であれば、当然にこの憲法(の仕組み)でやっていける」と答弁しました。今回の視察や質疑を通じ、大規模災害では、総理の指示で自治体や国民を縛りつける緊急事態条項よりも、現場の知恵や国民の代表から成る国会の意思を尊重することが、被害を最小限に食い止めるのに有効だと確信しました。