4e940e46c7e2e673be7161362e8a9b0a_tn64818日の深夜、安保関連法案が参議院本会議で可決され、成立しました。世論調査をすれば国民の8割が審議不十分、過半数が法案に反対という状況で、拙速に法案の審議を打ち切るのは国民主権を顧みない暴挙です。民主党など野党5党は、16日の夕方以降、法案の審議を継続するため、連日深夜まで国会の内外で抗議行動を続けました。しかし、与党側は特別委員会で不意を突いて強行採決をしたり、安倍首相や鴻池委員長などの問責決議を審議する本会議で野党の発言時間を制限したりするなど、連休前に法案を仕上げるという姿勢はかたくなで、野党に歩み寄る気配はまったくありませんでした。

与党は十分時間をかけて審議を行ったといいますが、法案を提出した政府において、国会に賛否をはかる上で最も重要なことを説明できていません。それは、①法案が憲法に違反しない、②法案を必要とする具体的な事実がある、③法案の目的とその達成手段が整合している、という三点です。

①についていえば、昭和47年の政府見解をはじめ、歴代の政権は、集団的自衛権の行使は憲法9条に反するとしてきました。この確立した憲法解釈を時の内閣の一存で変えようとするなら、誰もが納得できる説明が必要です。しかし、政府の説明は誤っていると、憲法解釈を仕事とする元最高裁判事、元内閣法制局長官、憲法学者の多くが指摘しています。

②についていえば、集団的自衛権が必要だとして安倍首相が国民に説明してきた、ホルムズ海峡の機雷掃海につき、安倍首相は現実問題として想定していないと答弁を覆しました。赤ちゃんを抱えた母親が乗った米艦の防護についても、日本人が乗っているかどうかは集団的自衛権の行使とは関係ないことが国会審議の中で判明しました。

③については、日本の平和と安全を守るのが法案の目的であり、その手段として集団的自衛権の行使を定めるものです。しかし、行使の要件である「存立危機事態」の意味があいまいなため、日本が先制攻撃したり海外派兵したりすることも可能です。これは法案の目的とかけ離れています。

少なくともこの三点については、与野党で徹底的に議論し、国民の理解が深まる努力をすべきです。国会議事堂という以上、国会では「議事」、すなわち集まって審議をすることが求められています。事の本質をうやむやにしたまま、数の力で採決を強行するのであれば、国会「議事堂」ではなく「採決堂」に過ぎません。ここ数日、深夜まで老若男女様々な方が国会周辺に集まり、安保法案に反対する活動をしていました。こうした方々の献身的な活動に応えるためにも、国会議事堂をその名に背かぬ場所にしなくてはなりません。