cbdd8d679341e33763e3234da569bf1d司法試験は、裁判官、検察官、弁護士などの法律家になる資格があるかどうかをみる試験です。法律家は、人の人生、時には命さえ決める職責を担う以上、それにふさわしくない人物に資格を与えることはできません。だからこそ司法試験は厳格、公正に行われる必要があります。試験問題が急に易しくなったり、特定の受験者だけが優遇されたりすることなど、あってはならないことです。

そのあってはならないことが、今年の司法試験では起きてしまいました。8日、司法試験の発表があり、1850人が合格しました。昨年より40人増加しています。司法試験受験者の激減や新規法律家の就職難などから、昨年の合格者1810人では多過ぎるという意見を踏まえ、政府は、この6月に「当面、これより規模が縮小するとしても、1500人程度は輩出されるよう」にすることなどを盛り込んだ改革方針を出したばかりです。

「今年の試験では、合格基準点を上回る高得点者が多かったため」というのが法務省の説明ですが、極めて疑問です。不合格者も含めた全体の平均点が42点も上がっているからです。確かに、年によって多少の平均点の上下はあるものの、今年を除けば過去5年間で平均点の上下動は20点の幅に収まっていたので、問題を易しくして合格者を水増しした疑いがあります。

さらに驚いたのは、同じ8日に、考査委員として司法試験の問題をずっと作ってきた法科大学院の教授が、自ら作った問題を教え子の一人に漏らし、解答方法まで教えたという事件が発覚したことです。この教授は、直ちに国家公務員法の守秘義務違反の罪で刑事告発されましたが、氷山の一角に過ぎないかもしれません。問題作成に携わる132人の考査委員のうち3割は法科大学院の教授であり、教え子たちに問題を漏えいしようと思えばできる立場だからです。大学受験でいえば、全国から受験者が集う難関のA大学の入試問題を、受験者が多いB高校の先生が作っているようなものです。不正が起きやすいことは明らかですし、仮に不正がないとしても試験の公正さに疑いが生じます。

まして、法科大学院については、さらに不正が起きやすい土壌があります。法科大学院を当初作る際、政府は修了者の7、8割が司法試験に合格することを目指しましたが、実際には極めて合格率が低い法科大学院が続出しました。現在政府は、合格実績の低い法科大学院には補助金を大幅にカットするなどして事実上閉鎖に追い込んでいます。生き残りがかかった法科大学院の教授が仮に考査委員に選ばれれば、合格者数を水増しするために問題を易しくしたり、教え子を有利にしたりしかねません。司法試験が「無法試験」とならないよう、問題作成のあり方を根本的に見直す必要があります。