安倍元首相以来、9年ぶりの国賓待遇で訪米した岸田首相は、バイデン大統領から手厚い「おもてなし」を受け、上機嫌でした。しかし、その陰で円安ドル高が進み、11日には34年ぶりに1ドル153円台となりました。海外からの輸入に頼るエネルギーや食料だけでなく、米国から購入する巨額の防衛装備品も値上がりします。岸田首相が国賓待遇で至福の時間を味わっている陰で、国民の生活は苦しくなり、「国貧」が進んでいます。

そもそも、円安の大きな原因だった日銀による「異次元の金融緩和」は終わり、マイナス金利も解除されたのに、なぜ円安が進んでいるのでしょうか?私は、見かけの金利はプラスになっても、「実質金利」はマイナスであることが影響していると考えます。

「実質金利」は、「名目金利(=見かけの金利)」から「予想物価上昇率」を差し引いて計算します。日銀は、短期の「名目金利」を従来のマイナス0.1%からプラス0.1%を上限とするよう引き上げる一方、「予想物価上昇率」は2%になった旨の宣言をしました。これは「実質金利」が、0.1%引く2%でマイナス1.9%になったことを意味します。

要するに、銀行などに1年間お金を預けても、利息収入のプラス分以上に物価上昇のマイナス分が大きいので、1年後にはお金の価値が1.9%も減ってしまうのです。しかも、日銀は「当面、緩和的な金融緩和が継続する」としていて、実質金利のマイナスは当分続きそうです。今回の日銀の動きを見て、低い金利でお金を借りてドルなどに交換して運用しようという「円キャリー取引」という動きや、円の預金をドルなど外貨の金融商品に切り替える動きが強まったはずです。その結果、円売りが増え、円安が加速したのだと思います。

12日の財務金融委員会で、こうした見解を述べつつ、鈴木財務大臣に円安の原因を尋ねたところ、実質金利がマイナスであることは認めつつ、「足元の円安の要因を一概に申し上げるのは難しい」との答弁。要因が分からなければ、有効な対策を打てるはずもありません。円安を食い止めるためにドルを売って円を買う「為替介入」についても、どうするか見解を求めましたが、「行き過ぎた為替の動きにはあらゆるオプションを排除せず、適切に対応する」というお決まりの答弁で、危機感や本気度が感じられませんでした。

本気で円安を止める気があるなら、今回の日米首脳会談で、日本と米国が協調して為替介入を行うことを提案したり、日本と米国の金利差を縮めるために米国に利下げを要請したりすることも考えられたはずです。岸田首相は、米国議会の演説で、日本は米国の「グローバルパートナー」だと述べて拍手喝采を浴びていました。しかし、軍事面でも経済面でも米国の言いなりになるだけでは、真のパートナーとは言えません。