19日から主要7か国首脳会議(G7サミット)が広島で開催されています。前回、日本でサミットが開かれたのは7年前のことでした。その際、今は亡き安倍首相は専門家も首を傾げるような統計を持ち出して、「世界経済はリーマン・ショックの前に似ている」と自説を述べ、その数日後に10%への消費増税につき、再度先送りを決めました。

2014年11月に1回目の増税先送りを発表した際、安倍首相は、「再び延期することはない、(景気次第で先送りできる)景気判断条項を削除して確実に実施する」と断言しましたが、その後の国会では「リーマン・ショックのような事態が起きれば先送りできる」旨答弁していました。安倍首相本人は「新しい判断だ」と開き直っていましたが、内外からサミットの場を利用したと見られています。その年の7月には参院選が予定されていたため、政権の延命を図るための増税先送りだったと言わざるを得ません。

一方、今回の広島サミットの陰で、サミットどころか、憲法までも「政権延命装置」にしてしまいかねない動きがあります。

衆議院の憲法審査会では、現在、自民・公明の与党と、維新・国民民主など野党の一部会派が、大災害や有事などの緊急事態で、国会議員の任期を延長して選挙を先送りできるようにする「憲法改正」を盛んに主張しています。「選挙直前に緊急事態が起きた場合でも、国会を開催し、国政に民意を反映できるようにするため」としますが、安倍首相のように無理やり「緊急事態」が起きたことにすれば、「政権延命装置」として悪用もできるのです。

そもそも今の憲法でも、解散で衆議院議員が不在の間に緊急事態が起きた場合に備え、参議院の「緊急集会」の定めがあります。「憲法改正」をせずとも十分に対応できそうです。しかし、「憲法改正」を主張する党派は、「緊急集会は、憲法が定める、解散によって衆議院議員が不在となってから総選挙を経て次の国会が開かれるまでの期間、すなわち最長でも70日しか活動できないので、緊急集会だけでは緊急事態に対応できない」とします。

この問題について、18日の憲法審査会では、憲法学者を招いて質疑を行いました。立憲民主党を代表し、私が「解散による衆議院議員不在の期間が国難で長引くときは、緊急集会の活動期間も当然延長されると考えていいのではないか」と、早稲田大大学院の長谷部教授に質問。すると、「70日の日数の限定は、解散後いつまでも総選挙や国会を行わず、民意を反映しない政権が居座ることを防ぐためにある。これを理由に緊急集会の活動期間を限定し、衆議院議員の任期を延長して従来の政権の居座りを認めることは、本来の目的に反する」と明快な答えが返ってきました。憲法は、政権の延命のためではなく、国民の命を守るためにあることを忘れてはなりません。