新年早々、驚きと共に喜んだ盛岡市民はとても多かったのではないでしょうか。世界的に有名な「ニューヨーク・タイムズ」に15日付で掲載された「2023年に行くべき52か所」で、ロンドンに次いで2番目に挙げられたのが「MORIOKA」だったからです。ほかに日本では19番目で福岡市が取り上げられているのみです。あとの50か所には、聞き覚えのある世界の有名スポットが数多く含まれています。この話題は、岩手のみならず全国のメディアで早速報じられました。

興味深いので元の英文の記事に当たってみると、①新幹線で東京から北へ数時間で行ける、②盛岡の中心市街地は歩いて回れる、③東洋と西洋が混ざった大正時代の建築物や近代的なホテル、旅館や川がある、④城跡公園が魅力の一つである、⑤車で1時間西に行くと田沢湖や有名な温泉が多数ある、などと街の特徴が書かれ、地元で人気のあるコーヒー店、わんこそば店、ジャズ喫茶店などが紹介されていました。この新聞の読者には海外の富裕層が多く、今年は訪日観光客の流れが変わるかもしれません。

もう一つ喜ばしいことがあります。ニューヨークで発行されている「フォーリン・アフェアーズ」という、世界的に権威のある外交専門誌の100周年記念号(昨年9、10月号)の巻頭論文で、岩手県矢巾町の「印象的な実験」が取り上げられたのです。

要約すると、①町の問題について話し合う前に、集会の半分の参加者に法被(はっぴ)を着せ、「自分は(2050年の)未来から来た」「孫の世代」と想像させた、②実験の結果、残りの半分の集団とは考え方や優先順位に大きな違いが生じた、③しかし、未来の世代を心配する姿勢が支持を集め、まとまった合意の半分以上は「孫の世代」からの提案だった、という内容です。

このような議論の方法は「フューチャー・デザイン」と呼ばれています。「財政制度等審議会」という国の財政を議論する有識者会議でも話題となり、出席者からは「矢巾町のような住民参加の活用事例がもっと広まることを期待したい」「すばらしい取組みなので、ぜひとも具体的なアクションにつなげていただきたい」といった評価の声が上がりました。

16日、仲間の国会議員、自治体議員らと矢巾町役場を訪ね、試行錯誤を繰り返しながら前例のない取組みを続けてきた政策推進監の吉岡律司さんからお話を伺いました。「言い訳を探す」のではなく、「方法を探す」過程で人脈が育ち、大きな実りとなるという言葉に一同感銘を受けました。「今だけよければいい」ではなく「孫の世代」の視点を持つことにより、安易に借金に頼る国の財政のあり方を見直さなくてはなりません。