安倍元首相の国葬や防衛政策もそうですが、岸田政権下では国会の閉会中に大きな政策変更を行う傾向があります。20日は、日本銀行が「異次元の金融緩和」を修正し、10年の長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げました。22日には、政府の「GX実行会議」において、これまでの政府の方針を転換し、原発の新規建設や60年を超える運転を認めることを決めました。前者は遅過ぎた「修正」であり、後者は早過ぎる「転換」です。

まず、金融緩和の修正について。私は1月25日の予算委員会の時点で、「異次元の金融緩和は、金利の低い円を売って金利の高いドルを買うことを促し、円安による物価高の原因となる」と指摘していました。黒田総裁はこれを無視して超低金利を継続し、その後急速に円安と物価高が進行。慌てた政府はドルを売って円を買う「為替介入」を24年ぶりに実施して円安を止めようとしましたが、それでも黒田総裁は従来のやり方を変えません。

為替介入を無意味にする日銀に対し、10月18日の予算委員会では「砂漠に水をまくようなものだ」と指摘し、黒田総裁の責任を厳しく追及。11月2日の財務金融委員会では「一気に金利を上げろとは言わないが、短期金利はマイナス0.1%をゼロに、長期10年の金利は0.25%を0.5%にするといった柔軟化をするべきではないか」と提案しました。

しかし、黒田総裁は「現在の経済、物価情勢を踏まえると、金融緩和を継続することが適当」として応じませんでした。今回ようやく私からの提案を一部受け入れ、長期金利の引上げを行ったものの、遅過ぎました。金融政策の失敗と自らの責任を認めたくない黒田総裁により、急激な円安と物価高が進んだことについて、日銀は真摯に反省すべきです。

次に、原発推進については、岸田首相が8月下旬に検討を指示してから、わずか4か月での方針転換でした。民主党政権が2012年に全国の11都市で意見聴取会を開き、賛否両論を踏まえた上で「2030年代に原発ゼロ」という目標を掲げて以来、どの政権も原発の新規建設を掲げてきませんでした。岸田政権でも今年の参院選の公約には挙げていません。

今も福島第一原発事故によって避難生活を余儀なくされている方が2万人以上もいます。事故現場で溶け落ちた核燃料の取り出しやプールで冷却中の使用済み核燃料の処分、広域にわたる汚染土壌の除去と最終処分、1千基を超えるタンクに滞留し、今も増え続ける処理水の扱いなど、解決の方法や時期が明らかになっていない問題が山積しています。

こうした問題を置き去りにしたまま原発推進を拙速に決める岸田政権に、「被災地の復興なくして日本の再生なし」などと語る資格はありません。