10日、衆議院総選挙の「一票の較差」を是正するための公職選挙法改正案が衆議院で可決。今後、参議院でも審議され今国会中に成立する見込みです。次回の総選挙から、小選挙区について一都三県と愛知県の議席が10増え、宮城県や福島県など地方圏の議席が10減ります。比例区についても都市部の議席が3増え、東北など地方圏の議席が3減ります。

最高裁の判例で、衆議院については「一票の較差」が2倍を超えると違憲状態とされます。違憲状態を改めるため、10年ごとの国勢調査の結果をもとに、小選挙区と比例区の定数は較差が2倍以内に収まるように見直されることになっています。地方の急速な人口減少により、今のやり方では地方圏から削られた議席が三大都市圏に移っていく一方です。

自民党の細田議長のように、定数の見直し方法を定めた法案を提出しておきながら、今ごろになって見直しに異議を唱えるのは論外ですが、地方にとっては看過できない問題です。同じ日に行われた憲法審査会で、私はこの問題を取り上げ、以下のように述べました。

「憲法43条で国会議員は全国民の代表とされていますが、自分に縁のない地域よりも、自分の慣れ親しんだ地域の期待に応えるために仕事をするのは否めません。今回の見直しで、人口が密な東京2区と過疎地の北海道12区とで面積の格差が755倍になるとの試算も示されました。東京2区と異なり、北海道12区の有権者は、選挙区や議員会館の事務所を訪ねて地元の代議士に要望を伝えるのも容易ではありません。

地方の議席が減るにつれ、地方の生の声は国政に反映されにくくなり、地方がますます衰退する悪循環が起きてしまいます。大災害や感染症のリスクを軽減し、出生率や食料自給率、エネルギー自給率を高める意味でも地方の存在は今後ますます重要です。地方が衰退することは、都市部を含め我が国全体が衰退することにつながります。

こうした問題を解決するため、デンマークやノルウェーのように、人口だけでなく面積を勘案して選挙区割を決めるという法改正を行うことも考えられます。しかし、最高裁が違憲判決を下す可能性が極めて高いのではないでしょうか。私は、投票価値の平等という要請と地方圏の意見を国政に適切に反映するという要請を調和させるための憲法改正の是非につき、当審査会で調査を進めることは非常に重要であると考えています。」

他の議員からは、戦争や災害などの緊急事態に備え、衆院議員の任期を延長できる憲法改正を行うべきとの意見が相次ぎました。将来起きるかもしれない緊急事態だけでなく、地方の人口減と議席減という、今起きている「緊急事態」にも目を向けるべきです。