6月17日以来、政府与党が憲法の規定を無視して開会を拒んできた国会が、3か月半ぶりにやっと召集されました。とはいえ、衆議院の任期満了が10月21日に迫っているため、会期は14日までの11日間と極めて短くなっています。加えて、4日の召集日に第100代総理大臣に就任した岸田首相は、その日の記者会見で14日に衆議院を解散し、19日公示、31日投開票の日程で衆議院の総選挙を行うと宣言しました。

前回4年前の総選挙では、森友・加計問題など不祥事の追及を恐れた当時の安倍首相が、やはり憲法の規定を無視して国会の開会を拒み続け、国会を召集した日に「冒頭解散」しました。このときは安倍首相が記者会見で解散を宣言してから投票日まで28日間でしたが、今回も解散を宣言してから投票日まで同じ28日間です。

今回は「冒頭解散」ではありませんが、首相の所信表明演説と各党の代表質問だけで、コロナ対策に必要な補正予算や法案を審議することもなく解散です。本音は、国会で各大臣の粗が目立つ前に「冒頭解散」したかったのかもしれません。ただ、さすがに二回連続の憲法違反という批判は避けたかったのか、国会は一応「やったふり」をしているようです。

「国会をやったふり」感は、8日の首相の所信表明演説を聴いて一層強まりました。4日の就任日から中3日を置いての所信表明演説だったにもかかわらず、就任日の記者会見で話した内容からほとんど進歩がなく、説得力が乏しかったからです。

例えば、記者会見で述べた「新しい資本主義の実現」とは、何なのか注意して聴いていると、最初に「大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の推進に努めます」とアベノミクスの三本の矢を引き継ぐことを明らかにしました。そして、成長戦略の柱として挙げた「デジタル田園都市構想」についても、デジタルと田園都市がどのように結びつくのかはっきりしないままでした。ビジョンの具体化を進める「新しい資本主義実現会議」を立ち上げるとしましたが、誰がいつまでに何を決めるのかが不明です。

また、震災復興については「被災者支援、産業・生業の再建、福島の復興・再生に全力で取り組む」とし、外食需要の落ち込みによる米価の下落については「当面の需給の安定に向けた支援」、コロナ禍で厳しい状況にある観光業については「観光立国復活に向けた観光業支援」を行うとしましたが、いずれも具体策がありません

政策通の岸田首相に似合わない、「政策よりも政局」を重んじる対応でした。選挙に勝つために実権を握ったまま「総理を変えたふり」をする重鎮に、毒されてはいないでしょうか。