「刷新」とは、物事の悪い点を取り除き、まったく新しいものにすることです。黒川氏が賭け麻雀で辞職した直後の5月26日、森法務大臣が急遽立ち上げを表明した「法務・検察行政刷新会議」は、何をどのように刷新するのか明らかにされないまま時が過ぎ、ようやく7月16日に第1回の会議が開かれました。

しかし、準備に時間をかけた割には、会議の内容はお粗末なものでした。法務省の担当者から、民主党政権時代に行った「検察の在り方検討会議」の活動とそれを踏まえて行われた「検察改革」や「新たな刑事司法制度」の説明を聞くことに大半の時間を費やしたとのこと。肝心のこの会議のテーマに関する議論はほとんど行われなかったようです。

それもそのはず、森大臣が1枚の紙で示したこの会議での検討項目は、「(検察官の)職務外の行動の在り方」、「意思決定プロセスの在り方」、「公文書の作成・管理、決裁のルールの在り方」、「対外的な説明の在り方」など、大ざっぱで何をしたいのかよく分かりません。

①犯罪行為である賭博を常習的に行うような人物が、時の政権の意向で史上初めての定年延長で要職に居座わり、犯罪行為が発覚しても重い処分を免れる歪んだ検察人事、

②このような人事を正当化するために、法律の解釈を180度変え、審議予定の法案を差し替えてしまう法務省の法を無視する姿勢、

③安倍首相の発言に合わせ、従来とは異なる国会答弁をし、都合の悪いことにはまともに答えない法務大臣らの無責任な態度など、

「刷新」すべきことは明らかなはずなのに、まったくやる気が感じられません。

森大臣は、安倍首相に進退伺を提出したところ、「検察の信頼回復のために引き続き業務に当たってほしい」と言われ、その地位に留まってきました。そして、信頼回復の手段として「法務・検察行政刷新会議」を設置した旨、5月26日の私の質問の際に答弁しています。

その答弁の時からこれまでの間に、検察は、菅原一秀前経済産業大臣の公選法違反事件、河井夫妻から買収資金を受け取った多数の地方議員、そして黒川氏の麻雀賭博事件と立て続けに起訴猶予としました。「起訴猶予」は、犯罪が成立し起訴が可能であるにもかかわらず検察の判断と権限で起訴を見送るものです。なぜ政権に関わりのある人たちの起訴を見送ったのか、いずれの事件についても検察や法務省から満足な答えは返ってきません。

安倍政権の下で、検察の信頼は回復されるどころか、ますます損なわれています。時間の無駄に過ぎない形だけの「刷新会議」は止めて、内閣自体を刷新すべきです。