お盆を前にして、新型コロナウィルスの感染拡大が止まりません。7日には、全国で1605人と過去最多の新規感染確認者数となり、これまでの累計が4万6611人(死者は1055人)になりました。全国で唯一感染者が確認されてこなかった岩手県でも、このところ少しずつ感染者が増え始め、累計で7人になっています。

そうした中、安倍政権の感染拡大を防ぐための取り組みがどんどん分かりにくくなっています。安倍首相は、6日に行った久々の記者会見で「高齢者の感染につながらないように十分注意して欲しい」としつつ、お盆の時期の帰省につき自粛を求めませんでした。お盆の帰省といえば、都市部に住む子や孫が、両親や祖父母が住む地方の実家に宿泊するために行うのが通例ですが、そのような場合、どのようにすれば「十分注意」したことになるのか定かではありません。

西村経済再生担当大臣も、「一律に自粛を求めるものではない」としながら、「それぞれの家庭で判断して欲しい」と無責任な発言をしています。帰省の自粛を求めれば、国内旅行を支援する「Go To トラベル」と矛盾が生じ、旅行者が減ってしまうということかもしれませんが、政府が明確な方針を示さなければかえって帰省も旅行もしづらくなります。

帰省の自粛を求めないというなら、政府は、帰省でコロナの感染者が広がるという不安をなくし、帰省者に対する「疑心暗鬼」が生じないようにするべきです。それには、①帰省者に大人数での会食を避けるよう求めたり、②高齢者のいる家に帰省する際に守るべき事項を周知徹底したりする必要があります。その上で、③万一帰省の最中にコロナの感染が疑われる症状があった場合には、速やかにPCR検査を受けてもらうようにする必要があります。

そのためには、検査・医療体制を整備するだけでなく、各人が積極的に検査を受けようと思える環境を整えなければなりません。ところが、岩手を含め、コロナ感染者やその家族、職場に対する世間の目は厳しいものがあります。とくにインターネットを通じた匿名による誹謗中傷は、それが事実の誤認や誇張を含んでいても瞬く間に多くの人に伝わり、攻撃対象となった方々の社会生活や心身の健康に大きな被害を与える危険があります。

そして、自分も同じ目に遭うのではないかと「疑心暗鬼」に陥った人が、感染の疑いがあってもPCR検査を受けなかったり、感染が発覚したのに感染経路や行動内容を明かさなかったりする事態が懸念されています。政府内でも、違法・有害なネット上の誹謗中傷を防ぐ方策について、総務省と法務省を中心に検討が行われています。「疑心暗鬼」がコロナ感染拡大を招かぬよう、国会でも、「言論の自由」に留意しつつ、議論を進めたいと思います。