24日、厚労省が人口動態推計を公表し、今年1年で誕生した子どもの数が、120年前に統計を取り始めて以来、はじめて90万人を割る見込みとなりました。前年より5万4千人、率にすると5.9%の大幅な減少です。

その要因を厚労省の担当者に聞くと、①出産適齢期の女性の人口が減少した、②昨年は、翌年に改元が決まっていたため結婚を控えたカップルが多く、それが今年の出生数を減らした、とのこと。しかし、5.9%の減少分のうち、①で説明できるのは約2%、②で説明できるのは約1.4%程度で、残りの約2.5%分の減少理由は説明できませんでした。

一方、20日に閣議決定された来年度からの5年間を対象とする「第2期 まち・ひと・しごと創生総合戦略」を見てみると、第1期の5年間でゼロにする目標だった「地方から東京圏への転出超過数」は、むしろ昨年までの5年間で10万9千人から13万6千人へと2万7千人も増え、地方から東京圏への転出超過(人口流出)が加速しています。

その中でも、20代女性の転出超過数は4万人から5万3千人へと1万3千人も増えています。盛岡市でも若い女性の東京圏流出が加速しているという話を聞きましたが、全国的な傾向です。そしてこのことが、生まれる子どもの数の激減にも関係ありそうです。

政府が「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定するきっかけとなった、前岩手県知事の増田寛也さんらの「2040年、地方消滅。『極点社会』が到来する」という論文では、出生率が低い大都市への「若者流入」は人口減少を加速させ、「若年女性」が急速に減少する地域では出生率を引き上げても人口減少は止まらない、という予測が述べられていました。

最近の出生数の激減を見ていると、増田さんらの予測が現実のものになりつつあると感じます。生まれる子どもの数がさらに急降下しないようにするため、地方の「若年女性」が東京圏に流出するのを止めることが急務です。それには、地方と東京圏の賃金格差を縮めていく必要があります。最低賃金の格差をなくすことはもちろんですが、賃金水準の引上げが難しい地方の中小企業が「若年女性」を正規雇用する場合には、国が資金面や税制の面で支援する仕組みも考えるべきではないでしょうか。

ILCとその関連産業の誘致など、高等教育を受けた「若年女性」が能力を発揮できる職場を増やしていくことも重要です。IRを誘致すれば地方が元気になるという人もいますが、地方の富が一部の政治家と投資家の食い物にされる危険が明らかになりました。物心両面で地域に住む人を貧しくするカジノでは、人口減少を止められるはずがありません。