5日、財務金融委員会で麻生太郎首相に初めて質疑を行いました。米国大統領選でオバマ氏が勝利を決めた直後であったため、本題に入る前に、「米国のように二大政党が主張をぶつけ合う選挙を日本でもやりたいと思ったか、民主党が政権交代を果たしたので選挙をやりたくないと思ったか」と、大統領選の感想を尋ねました。
雄弁家の麻生首相が機知に富んだ答弁をするのではないかと期待したのですが、「米国の民主党と日本の民主党は関係ない」、「民主党が党首討論に応じないから選挙ができない」と、面白みのない責任転嫁の答弁にがっかりしました。
「金融ビッグバンの後、金融機関には自由の見返りに自己責任が求められるようになったはずなのに、いざ金融危機が起きると、金融が実体経済を人質にとって 国民に対して身代金を要求するような事態が生じてしまう。金融危機が二度と繰り返されないよう、金融機関が公共的使命を自覚して責任を果たすような規制の 在り方に変えていくべきではないか。」との問いには、

「つぶれた金融機関の救済方法の基準をはっきりさせる」と金融危機が起きた後の対応を答えるなど、一国の指導者らしい本質を突いた答弁は皆無でし た。米国では8年ぶりに政権交代が起き、これまでと違う有能な指導者に期待が高まっています。質疑を終え、日米の指導者の格差拡大に不安を感じました。

【議事録】170-衆-財務金融委員会-5号 平成20年11月05日

○階委員 民主党の階猛でございます。本日は、首相に質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私もちょっと、きょうは歴史的な日ということで、アメリカ大統領選挙について端的に聞きたいんですけれども、アメリカのように二大政党で、それぞれの リーダーとなるべき人が主張をぶつけ合って国民の審判を仰ぐという選挙を、今回のアメリカ大統領選挙を見て首相もやりたくなったんではないかなというふう に……(発言する者あり)ちょっと聞こえないと思います。

○田中委員長 御静粛にお願いします。

○階委員 その二大政党制で主張をぶつけ合う選挙をやりたくなったのか、それとも、民主党がアメリカでも政権をとったということで逆に選挙をしたくなくなったのか、この辺について率直な感想をお聞かせ願えますか。

○麻生内閣総理大臣 民主党という名前はあちらこちらにありますので。失礼ですけれども、アメリカだけではありません。日本にもありますし、ほかの 国にもありますので、別にアメリカができたからすぐ日本も民主党というような、そういった短絡的な思考は私は持っておりません。それがまず第一です。
二つ目。ああいったような選挙をやりたいと思っても、我が方では党首討論に相手の方が出てきておられませんので、ここらのところはなかなか難しいというのが現実なんじゃありませんか。

○階委員 選挙の話をしているので、党首討論じゃないということを申し上げたいと思います。
次に、今回、追加景気対策にはなぜか生活対策という名前をつけておりますけれども、この「「生活対策」について」というものについて、ちょっとお聞きしたいんです。
二ページ目の(四)というところに、「一過性の需要創出対策ではなく、自律的な「内需主導型経済成長」への移行を後押しする」というふうにありますけれども、今回の定額給付金はまさに一過性、一時的なものです。なぜそういうふうに言えるのでしょうか。

○麻生内閣総理大臣 私が今生活対策と申し上げておりますのは、少なくとも今回の中で三つ申し上げたんだと思っております。
一つは生活者の暮らしの安全ということで、これは消費の安定ということが大事なところだと思っております。二つ目は金融、経済の安定。これは、中小また 小規模企業の資金繰りというものを考えたところには、これが一番大事なところではないか。三点目は、地方というものがかなり疲弊してきていると思っており ますので、その意味では地方の底力を発揮するということが大事なのではないかということで、一、二、三としてその順番で申し上げたと存じます。
また、生活対策というものは、これは有効需要というものをつくり出さぬといかぬのはもう御存じのとおりなので、少なくとも、私たちは一過性の財政出動と いうものにとらわれることなく、内需拡大というものをやっていかないと、これから外需に頼る部分というのはかなり減ってくるだろう、減らざるを得ないと 思っておりますので、そういった意味では、経済成長を実現するためにはということでこの案を考えております。
住宅ローン減税過去最大、またリフォーム等々につきましてもということをいろいろ申し上げておりますのは、少なくとも内需拡大においては住宅は大きな問題だと思っておりますので、私は住宅ローン減税というものを過去最大ということを申し上げているということであります。
そして、こういった対策を速やかに実施するということは、やはり経済対策というものを、経済の体質というものを内需に交換していく大事なところなんだ、 私自身はそう思っておりますので、公共工事等々に安易に頼ることなく、こういったことをしていくということが大事なのではないかと思っております。

○階委員 一過性のものではないというお話で、経済の体質を転換しようという御趣旨なんでしょうけれども、そういったことは、そもそも追加景気対策 で言うまでもなくて、所信表明演説のときに言うべきことじゃないでしょうか。なぜ、当初から首相の基本方針として言わなかったのでしょうか。この期に及ん でなぜ出てきたのか教えてください。

○麻生内閣総理大臣 所信表明におきましても明らかにさせていただきましたけれども、米国の経済とか世界の金融というもの、こういったものから目が 離せるような状況にありませんから、実体経済へどういった形でこれが影響が出てくるかということをよく見定めた上で弾力的に行うということは、施政方針と いうか所信表明演説においてもそう申し上げて、そのとおり政権運営を行っておると思っております。
安心実現のための緊急総合対策の決定というのは八月の二十九日、その後に九月の十五日のいわゆるリーマン・ブラザーズの破綻に端を発しましたので、実体 経済に与える影響というのはさらに大きなものになってきている、急激に十月ぐらいからはっきりしてきたと思っております。
そういった状況を踏まえて、今般、経済の体質というものを考えて、日本の経済というものを、今後その底力を発揮していくときに、やはり生活のところが安 心しないとどうにもなりませんので、そういった意味では生活対策ということを申し上げたところでして、今後も市場の動向というものを考えながら、少なくと も必要な措置というものは必要に応じて弾力的に行っていくということが大事なところだ、かつ迅速にやっていかなければならぬのだと今回はつくづく思ってお ります。

○階委員 この問題についてはこれから法案がいろいろ出てくるでしょうから、またそういう場でも議論させていただきたいと思います。
今回の公的資金の問題について、お話を移らせていただきます。
私も十年前、先ほど首相もおっしゃられた長銀ですね、あそこにおりました。それで、公的資金を実際に注入されるかされないかということで、その当時国会 でもけんけんがくがく激しい議論がされていたわけです。ところが、今回は、何となく公的資金を使うことに対して何か当たり前のことのような雰囲気も漂って いるわけです。まさに隔世の感といいますか、私どもは本当に、公的資金を入れられることの重みといいますか、我々は本当に長銀という銀行が社会に迷惑をか けたとすごく責任を感じたりしたわけです。
そのようなことを思いながら当時を振り返ってみますと、まず平成八年から、当時橋本首相だったと思いますが、金融ビッグバン、フリー、フェア、グローバ ルという合い言葉で、金融機関の業務の自由化、ルールの明確化、透明化、世界標準に合わせた制度の導入、そういったものが進んだわけです。以来、金融機関 の競争が激しくなりまして、その前の護送船団と言われた時代と違って、金融機関も自己責任を問われることになりました。自己責任を問われることになりまし て、その結果、平成十年、それ以外の金融機関も含めて長銀も破綻したわけです。
金融ビッグバンのもとでは、今申し上げたとおり自己責任が大原則でありまして、公的資金の注入は例外中の例外というふうに認識しております。
そこで、今回お配りしている資料、四ページ目、下から三つ目の丸のついた項目で「「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」の活用・改善」という ところで、その下の括弧書きで「使い勝手の改善を図る」ということが書いてあります。この「使い勝手の改善を図る」というのは、いかにも何か公的資金を安 易に使う、公的資金に安易に依存するというようなことを言うニュアンスがありまして、私は金融ビッグバンのもとでの自己責任の大原則と矛盾するのではない かと思うんですけれども、その点について、首相の御所見を伺いたいんです。

○中川国務大臣 公的資本を注入するということは、国民の税金を使わせていただくわけでありますから、十年前もそれから今回も、非常に慎重な制度設計をしていかなければなりませんし、国民の皆様方の御理解もいただかなければならないことは同じだろうと思います。
ただし、今回は、システムリスクはないけれども、世界的な経済の状況あるいは日本の景気の低迷の状況の中で、特に、地方そして中小企業が必要とする資金 を金融機関から融資してもらうときに、金融機関の方も十年で、階委員も御承知だと思いますけれども、企業が債務を減らしていくとか、あるいは債権の方です ね、金融機関の債権の方の証券化によるオフバランスの問題だとか、いろいろな形で出てきているわけでございます。
そういう中で、金融機関は必要なお金を貸したくても貸せないという状況も他方にある。健全な金融機関であってもそういう状況に陥るわけでありますから、 今回は、そういった緊急な経済対策の一環といたしまして、緊急に資本参加をする、公的資本を使って国が資本参加をするということについては、私は、この ルールどおりに行っていけば、国民のニーズあるいは期待に十分こたえられるものである、そういうふうにしていかなければいけないというふうに理解をしてお ります。

○階委員 首相に聞きたかったんですけれども、ちょっと時間がないので次に移ります。
要するに、自己責任の大原則というのがあるということはお認めになっていると思うんです。ただし、自己責任を問おうとしても問えない場合がある、これが大きな問題なんだと思うんです。
金融ビッグバンによって、金融と実体経済の関係が大きく変わったというふうに認識しております。以前は、実体経済の成長に貢献するのが金融の役割だっ た。ところが、最近では、実体経済の成長に関係なく金融が肥大化して、金融危機が起きると実体経済に悪影響を及ぼしている、こういうことだと思います。特 にアメリカの例なんかを見ていますと、例えて言えば、金融が実体経済を人質にとって、そして国民に対して身の代金を要求している、そういうような感覚も覚 えるわけです。
私が思うに、自由と責任はセットだ、責任なき自由というのはあり得ない。したがって、金融が実体経済に貢献するという積極的な役割、公共的な役割、これが金融が責任を果たすということだと思いますが、この点について、首相、どのようにお考えになりますか。

○麻生内閣総理大臣 御質問の趣旨は、あれですか、自由と責任はついて回るという話をされて、それと金融とどういうぐあいにつなげておられるんですか。

○階委員 済みません、ちょっとはっきりしませんで。
要は、今までは自由の方だけに余りにもウエートが置かれ過ぎていたのではないか。日本も含めて、金融ビッグバンですから世界標準だと思います。日本も含めて、金融の世界が自由にのみ偏重してきた。
そういう中で、自由で、かつそれに伴って責任も負わなくてはいけないのではないか、つまり公共的な役割も果たさなくてはいけないのではないか、そういう 問題意識なんですけれども、自由と責任がちゃんとセットになるように、自由を行使するのであれば責任もちゃんと負うというような規制、そういう規制にして いくべきではないかと思いますけれども、どうでしょうか。

○麻生内閣総理大臣 金融がきちんといろいろな、自由な市場とか経済というものをいろいろな金融の面で支援していくという、自由には責任が伴ってい るのは当然じゃないかというお話なんだと思いますが、それは当然のことなんであって、金融機関はそれに対してしかるべき責任は持たねばならぬ。それはどこ の自由主義経済でも、そこが一番の考え方の基本になっているということは、それはもう間違いないと思いますが。

○階委員 要するに、今の規制のあり方でいいのかどうか。自由だけを追求して、その結果、経営に失敗したときは自分では責任をとれなくなって、そし て公的資金のお世話になる、社会に迷惑をかける、そこを見直さなくてはいけないのではないか、今までの規制は余りにも自由に傾き過ぎていたのではないか、 そういう問題意識なんですけれども、その規制のあり方について、今のままでいいというお考えですか。

○麻生内閣総理大臣 基本的に、金融会社というか金融関係に携わっている業界というか、そういった人たちはそれなりの、金融という非常に大きな、か つ公的資金も含めましていろいろ扱うところが、きちんとその責任体制をしておかないかぬ。それは何も長銀に限ったことではない。世界じゅうみんな、銀行た るものは同じ責任を、少なくとも、多かれ少なかれきちんと負わなきゃならぬのは、これは金融という業界にいる場合の最低のルールだというふうには、私もそ れは全くそういうものだと思っております。
ただ、今言われましたように、起きております例は、例えば、巨大な金融破綻がアメリカで起きたときに、それを責任だと言ってほうった場合、それによって 被害を受ける、そこに預金している人たち等々に多大な被害が起きるということを考えて、それぞれの国で、今回はどうするとか資本注入をするとか、いろいろ な、その国によって対応はこれまでも違ってきたんだと思いますが、日本の場合においても、少なくとも自由主義経済をやっている以上、基本は今のものが基本 なんだと思いますが、その影響が余りにも大き過ぎた場合はしかるべきことをやってきた。
アメリカの場合でも、ここは助けて何でここは助けないのかとか、いろいろな話がよくあるところではありますけれども、そこのところのどこで線を引くかというのは、これは物すごく難しいところだとは思っております。

○階委員 私が長銀で感じたことを言いますと、やはり金融というのは特殊な業界なんです。いざとなったときに、自分だけの問題じゃないんです。破綻したときに、社会全体、経済全体に迷惑をかける。
となってくると、やはり規制のあり方というものも余り、自由でいいよ、そういうことではない。やはり金融機関として公共的な使命を果たすような、例え ば、もうけた金額を全部利益の配当に回すとかそういうことではなくて、かえって規模が大きくなればなるほど自己資本を厚くしていざというときに備えると か、そういうような、行動を自重する、余り激しいリスクテークとかそういうことをしないような規制のあり方を考えていくべきじゃないか、そういう問題意識 なんですが、いかがでしょう。

○麻生内閣総理大臣 基本的に、今先生の言われているところは、金融機関としてのあり方、姿勢、いろいろなことを言っておられるんだと思いますが、 私も、基本的に、その金融機関が大きくなればなるほど破綻したときの場合の社会的影響は大きい、はっきりしていると思っております。
そういった意味で、アメリカの場合も、どういう基準であの銀行は助けてこの銀行は助けなかったのか、これはいろいろ意見が分かれるところなんだと思いま すが、それぞれその場におられる方々はいろいろなことを勘案されて、こっちはやるけれどもこっちはやらないということは今回の場合も決めているんだと思い ます。そういう意味で、日本の場合におきましても、何を基準にするかというときには、やはり物すごく大事なところは、今言われたようなところはきちんと踏 まえてやらないと、こっちは助けたけれどもこっちは助けなかったという、その基準というものをきちんとしておかないかぬという御意見なんだと思いますけれ ども、それは間違いなく、その基準というものは明確かつ納得を得やすいものにしておかないといかぬ。
ただ、前回のときのように、急に来ちゃったりなんかするとどうにもならなくなったりいたしましたのは、一九九七年でしたか、前回の騒ぎのとき、九八年の とき、あのときも多くの銀行が、長銀を含めて、あのときは債券信用銀行また証券会社でも幾つか、年末から年始にかけてすごい騒ぎになったときがあります。 あのときに、我々として教訓を随分学んだと思った。おかげで、今回の場合、他のヨーロッパの国々に比べて日本の場合はそのころから学んだことが多かった、 学習したことが多かったのではないかと思っております。

○階委員 確かに、その十年前の教訓で、私も含め日本の金融機関、いろいろ学んでいます。それは確かなんですけれども、やはり今回のようなことが何 年か置きに繰り返されるわけですね。金融危機が実体経済を振り回してしまう、しっぽが胴体を振り回すというような表現を使ったりもしますけれども、そうい うことがないように規制のあり方を考えるべきだということです。
それで、日銀総裁もいらしていただいていますので、法案の話は先ほどからいろいろ出ていますのでちょっと一たん離れて、日銀総裁の方に伺わせていただきます。
今回、利下げされたわけですね。それで、お配りしている資料、多分一番最後についていると思いますけれども、今回は、こういう例が過去にあったのかどう かわからないんですけれども、日経新聞で、三十一日の政策決定会合の前、二十九日の朝刊一面に大きい記事が載りました、「日銀、利下げ検討」と。これを マーケットが織り込んで、マーケットがどんどん利下げを織り込む方向で進んでいってしまった。こういった事実がある中で、実際の政策決定会合の判断には影 響が当然及んでいるんじゃないかと思うんですけれども、この点について、総裁、どのようでしたでしょうか。

○白川参考人 お答えいたします。
日本銀行では、毎回の金融政策決定会合におきまして、政策委員が、会合までに明らかになりました経済金融指標やさまざまな情報を丹念に点検しまして、十分な討議を行った上で政策を決定するということを行っています。この点は、今回の決定会合も全く同様であります。
会合では、実体経済面につきまして、各種の経済指標などから、世界経済の調整が一層厳しさを増していること、それから日本経済についても、輸出が頭打ち にあり、設備投資や生産が減少傾向にあることなどを確認しました。また、金融面では、株価の下落、それから社債の信用スプレッドの拡大や為替円高など、国 際金融資本市場の動揺が我が国の金融市場にも波及してきているということを確認いたしました。
こうした点検結果に基づきまして、会合では、日本経済は当面停滞色の強い状況が続くと見込まれ、また、先行きの景気の下振れリスクが高まっている一方で、物価の上振れリスクは以前に比べ低下しているというふうに判断しました。
以上申し上げましたような情勢判断を踏まえ、政策金利を引き下げるとともに、金融調節面での対応力を強化することを通じて、緩和的な金融環境の確保を図ることが必要というふうに判断しました。
このように、今回の政策判断は、事前の新聞報道等によって左右されたものではありません。経済金融情勢に関する十分な点検に基づいて決定を行ったということであります。

○階委員 影響されていないというお話ですけれども、今回仮に利下げを見送ったとした場合、マーケットは大混乱ですよ。こういうことを今回の報道と いうのは招きかねなかったということです。こういう報道のあり方について、これでいいんでしょうか。報道の自由ということで問題ないんでしょうか。御見解 を伺えますか。

○白川参考人 金融政策でございますけれども、これは、金融市場や金融機関の行動を通じまして効果を発揮するものでありますので、中央銀行としましては、タイムリーで適切な情報発信を行うことが重要であるというふうに考えています。
こうした点を踏まえまして、日本銀行では毎回、金融政策決定会合後の公表文や展望レポート、それから金融経済月報などのレポート類、さらには記者会見な ど、さまざまな機会を通じまして、経済、物価情勢の判断や、金融政策運営の基本的な考え方について丁寧な説明を行っております。
もっとも、具体的な政策判断ですけれども、先ほど御説明しましたように、毎回の決定会合において、これは、ぎりぎりまでさまざまな指標、情報を集めまし て、それをもとに政策委員が討議をして、決定をしております。こうした枠組みにおいて、具体的な、日本銀行自身が政策のタイミングをあらかじめ示唆するこ とはもちろんあり得ませんし、そうしたことをしますと、市場の持ちます経済・物価観を読み取ることができなくなってまいります。
日本銀行としては、市場とのコミュニケーションを双方向の有意義なものとしたいというふうに思っていますけれども、日本銀行の金融政策決定の枠組みが先 ほど申し上げたようなものでありますと、そのことは……(発言する者あり)そうした仕組みであることが関係者の間に十分浸透していってほしいというふうに 強く願っております。
マスコミのあり方について私がここでコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

○階委員 質問をかえます。
特別会計等々のリスク管理について伺いたいんですけれども、今回の定額給付金の財源としては財投特別会計の金利変動準備金を充てるというふうに聞いてお ります。その結果、充当された後、二兆円でしたでしょうか、二兆円をその準備金から充てた後、残った準備金というのはそのリスクに見合う十分な額になって いるのか。なっているとした場合、どの程度その必要な準備額を上回っているのか。ここについて、事務方で結構ですので、教えていただけますか。

○佐々木政府参考人 財投の金利変動準備金についてのお尋ねでございますが、今般取りまとめられました生活対策に基づきまして、私ども、速やかに実 施できるものは実施に移すことにいたしました。また、予算措置等が必要なものについては、今後さらに内容を詰めるというような、必要な作業を進めることと いたしております。そうした作業を行った上で財源について検討を行うということでございまして、財投特会の金利変動準備金の活用額につきましては現時点で は決まっておりません。
いずれにしましても、当面の緊急的な対応として、一時的、特例的に財投特会の金利変動準備金を活用するに当たりましては、財投特会の財務の健全性に配慮しつつ今後検討を行ってまいりたいと考えております。

○階委員 それから、きょうは厚労省と金融庁の局長にもおいでいただいているんですが、公的年金の積立金の含み損益の状況、直近の数字、お願いします。それと、あと金融庁の方には政府保有株式の含み損益の状況、時間がないので続いてお願いします。

○渡辺政府参考人 公的年金に関してお答え申し上げます。
御承知のように、国が年金積立金管理運用独立行政法人に資金を寄託して、そこで分散投資をして運用しておりますので、その実績につきましては、時価にお ける運用収益という形で管理し、公表をしてきております。もとより長期的な観点から評価すべきものでありますが、年金加入者の方々に適時適切に情報提供を するということがありますので、諸外国の例も参考にしながら四半期ごとにこれを公表しております。
直近でございますが、十九年度全体を通じまして約五兆二千億のマイナスとなりましたが、過去七年間の累積では二十三兆円のプラスとなっていることを公表 しております。また、二十年度に入ってから、四月から六月の第一・四半期におきまして、市場運用分では約一兆四千億円のプラスが出ているということを公表 しております。第二・四半期を含む上半期の運用実績につきましては、昨年の場合、十二月上旬に公表しておりますので、そうした時期までには、私ども今のと ころ、当該独立行政法人で公表の手続を踏まれる、こういう予定であると承知しております。
以上でございますが、何とぞよろしくお願いいたします。

○内藤政府参考人 私どもが所管しております銀行等保有株式取得機構の保有株式の状況でございますが、直近、これは平成二十年の九月末現在の数字で ございますが、同機構が保有する株式は、簿価総額が四千五百六十一億円、時価総額が四千五百四十六億円ということでございますので、十四億円の含み損とい うことになっております。

○階委員 先日は、質疑のときに、たしか一ドル九十五円のときでしたけれども、外為特会の含み損が二十四兆円あるというふうに伺いました。積立金を 差し引いても四兆円マイナスです。外為特会の資産規模というのは日本円に直すと百兆円程度で、大体メガバンク一行分ぐらいなんですよね。銀行であれば即倒 産するような、そういう含み損を抱えているわけです。
政府は、金融機関のリスクの管理体制、これを監督しているんですけれども、外為特会のリスク管理を含め、また、今聞いた公的年金のリスク管理を含めて、非常に心もとないと思っております。
首相は政府の資産や負債のリスク管理についてどういう方針をとろうとしていますか、最後にお聞かせ願えますか。

○麻生内閣総理大臣 基本的には、特別会計がいろいろありますのは御存じのとおりなんで、これはそれぞれ法律が全部別々にありますので、その法律に 基づいて適切に管理するとしか申し上げられないんですが、例えば外国為替資金というのにつきましては、これは為替介入に備えて保有するものですから、流動 性とか安全性とかいうものを考えて保有するということだと思っております。
また、逆に、年金の積立金といったようなものにつきましては、これは将来の年金給付のいわゆるもとになる財源ですから、そういった意味では、これはむし ろ長期的な観点から、こういったものはきちんと、利益よりむしろ安全かつ効率的に運用を図るというようなことを考えていかなければならぬのであって、安易 に株とかなんとかそういったことはだめということが基本なんだと理解しております。

○階委員 我々はふだん、予算という単年度の数字しか見ておりませんけれども、やはりバランスシートもこれからちゃんと見ていかないと、財政再建す るに当たっては本当にそれは大事なことなんだと思います。ぜひそのリスク管理ということを、金融機関だけではなく、まずはみずから襟を正すということで しっかりやっていただきたいなというふうに思います。
きょうはどうもありがとうございました。