29日、財務金融委員会において、中川財務金融担当大臣に対し、金融機能強化法に関する質疑を行いました。

金融市場の混乱で損失を被った一部の金融機関が中小企業への貸し渋り・貸し剥がしを行う動きがあります。この法律は、金融機関に公的資金を注入することで財務体質を強化し、中小企業への融資を円滑に行わせることを目的としています。

ただし、金融機関の自発的な申請がなければ公的資金を注入できないことから、この法律で は申請した銀行の経営責任を必ずしも問わないことにしています。また、注入した金融機関が中小企業向けの融資を増やさなかった場合も、必ずしも責任を問わ れません。さらに、新銀行東京のような経営再建中の銀行にも公的資金を注入することが可能とされています。

10年前に日本で金融危機が起こった際にも、金融機関へ公的資金を注入するための法律が作られました。その時は、経営に問題のある銀行が安易に公 的資金を申請し、無駄遣いされないよう厳格かつ明確なルールが定められていました。今回はあいまいな部分が多く、中小企業向け融資の円滑化という目的が達 成されない可能性があります。

今回の質疑では、金融危機を口実にして公的資金のバラ捲きが行われないよう、経営責任逃れや公的資金の流用を防ぐための実務的な提言を行いました。

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170-衆-財務金融委員会-2号 平成20年10月29日

○階委員 民主党の階猛でございます。
きょうは、金融機能強化法、金融機関に公的資金を入れるというお話でして、実は私も、十年前、長銀の破綻というのを経験して、公的資金を入れることの重 みは重々承知しているつもりでございますけれども、それゆえに、この法案についてはしっかりと審議をしていかなくてはいけないと思っております。それか ら、後ほど、新銀行東京へのこの法律の適用についても触れさせていただきます。
まず、経営責任を制度上一律に求めないというふうに伺っております。お手元の資料の一枚目に、前回のこの金融機能強化法、それと今回の見直しの違いが載っておりますけれども、経営責任を制度上一律には求めないというところで確認したいんです。
まず、公的資金を申請した銀行の自己資本比率が四%を下回る低い水準の場合、モラルハザードを防ぐためには経営責任を求める場合もあり得るということで よろしゅうございますか。逆に、四%以上の場合は経営責任は一切問われることがないのか。その辺を教えていただけますでしょうか。

○中川国務大臣 いわゆる自己資本比率、金融業の自己資本比率というのは、ある意味では非常に重要でございます、ある意味でと言ったらおかしいんで すけれども。国際的な基準というものがあり、それから、四というのは、国内の、日本の中での日本のルールとして四を確保せよということになっております。
基本的にこれは守らなければいけないというふうに思いますが、今回の、ことしの三月三十一日で切れた法律を急遽修正復活させた最大の原因は何かと言われ れば、やはりこれは、世界の金融情勢の激変、これによって、例えば、持っている資産の価値が減少した結果資本が小さくなってしまって、結果的に四%ルール になると貸せなくなってしまうというような、今まで想像できなかったようなことが今起こっているということでございます。
したがって、経営責任を問わないとか問うとかいうのは、午前中も申し上げましたように、だったら経営者は何でもいいというものでは決してございません で、もちろん、経営者は経営者としての責任をしっかり果たしてもらわなければいけないわけでございます。しかし、四とかあるいは何とかという数字に最初か らこれが絶対条件だということではなくて、目的はあくまでも、こういう緊急事態の中で健全な貸し出しを引き続きあるいはまた円滑に、プラスになれるような 形をつくるための資本注入であるというのが主眼でございます。

○階委員 要は、自己資本比率と経営責任は必ずしも直結しないということでよろしいですね。自己資本比率と経営責任は直結しないということです。(中川国務大臣「必ずしもですよ」と呼ぶ)了解です。
それで、経営責任という言葉について確認したいんですけれども、経営責任というのは、代表取締役の退任ということでよろしゅうございますか。

○中川国務大臣 それはやはり、経営責任というのはいろいろな形があるんだろうと思いますよね。最終的には、退任、あるいは退任の仕方もあるでしょ うし、経営責任イコール、懲戒退任というのがあるかどうかわかりませんけれども、あるいは辞任かどうかわかりませんけれども、そういう場合もあるでしょう し、必ずしも責任イコールやめさせるということだけではないという中での、それも含むということでございます。

○階委員 あの前回の強化法では、そこら辺はたしか、公的資金注入と引きかえに経営責任を問われる場合というのは代表取締役の退任というのを意味していたと思うんですが、違いましたでしょうか。局長の方からで結構なんで、教えていただけますか。

○内藤政府参考人 お答えいたします。
現行法では、私ども想定しておりますのは、トップ、経営者の退任ということでございます。

○階委員 そうすると、大臣の御答弁によると、ちょっと経営責任の意味が今回は違うということになりますけれども、それで結構ですか。

○中川国務大臣 ですから、現行法によるとということで、先ほども申し上げたように、経営者の責任というのは、やはり経営上責任があるから責任をと るということですけれども、今回は、全く海の向こうで起こったことが一瞬のうちにコンピューターを通じて日本のある金融機関の中で何か悪さをして経営に影 響を与えるというようなことも想定されたからこそ、こういう法律を今御審議をいただいているわけでございます。
もちろん、辞任あるいはやめることに値するようなことを経営者もしくはその経営体そのものが起こした場合は、さっき申し上げたように、それは、経営者の 辞任、あるいはまた免職というんでしょうか、ということもあり得ると思います。ですから、個別の事象事象によって判断は異なってくるというふうに思いま す。

○階委員 そうすると、従来の金融機能強化法とは大きく違うのは、そもそもその経営責任がどのような場合に問われるのかというところも違いますし、 また、問われる場合の経営責任の内容も違うということで、非常にあいまい、グレーなわけですよね。私が思いますに、その辺がはっきりしなければ、事前に、 自分がこの資本注入を申請した結果、将来どういう責任を問われるかわからないということで、かえって公的資金の注入の申請をちゅうちょするんじゃないかと 思います。
また、この資料の二ページ目以降に、これは、大蔵省出身の方がどういう銀行に天下りされているかというのをちょっとまとめたものでございますけれども、 そういう地銀、第二地銀に大蔵省出身がいろいろ天下りされているわけです。うがった見方をすれば、今回、経営責任をどういうケースで求めるのか、あるいは どういう内容で求めるのか、これがあいまいになることによって、いざ経営責任を求めるというときに、こういう天下り先には甘くなってしまうんじゃないか。
要するに、経営責任のことについて言えば、むしろ、行政の裁量権を濫用しないようにあらかじめ明確かつ具体的な、客観的な基準を定めておくべきではないか、その方が望ましいのではないかと思いますが、いかがお考えですか。

○中川国務大臣 経営者が職務上権限を濫用するなんというのは、これはどの世界でもまずおかしい話であって、それはもう責任に値するわけですね。で すから、今回の場合には、責任要件というものが……(階委員「経営者ではなくて、行政が権限を濫用してその経営責任を追及するかどうかというところです」 と呼ぶ)行政の権限の濫用というものは、もとよりあってはならないことでございます。

○階委員 もとよりあってはならないことを制度的にどういうふうに担保するかということで、今までのように、ちゃんと明確かつ客観的な基準で、どう いう場合に経営責任を問うか、問う場合には代表取締役退任だというふうにその経営責任の内容もはっきりさせておく方が、かえって申請をする側としては、透 明感があって、申請をちゃんとするようになるんじゃないかというふうに思うんですけれども、どうですか。

○中川国務大臣 それはどうでしょうか。あの前の法律のままでいって、そして、海外での出来事によっていきなり経営が仮に悪化してしまったという場 合に、資本を注入していたときに、これは直接ではないけれども、海外の出来事によって経営が悪化してしまった、これはけしからぬ、経営責任だといって自動 的にやめなければいけないというのが、多分、前の法律のままであったらそういうことになっていたのではないかと思うわけです。
しかし、一律に問わないということは、逆に、外国、あるいは本来の経営をきちっとやっているにもかかわらず、そういう事態になって、自己資本比率が下が るなり収益がちょっと悪くなりということについては、これはやむを得ないこういう世界の金融情勢であるということですから、今度の法案によってこれはまた 別の判断が出てくる。前の法律でも、多分、経営責任をとるといっても、ケース・バイ・ケースで、私は一律にきちっと定義はできないと思いますよ。
今度はますます、いろいろまたやわらかい表現になってきたことは事実でありますけれども、それは、行政の権限を濫用するとか、あるいはまた経営者側をし り込みさせるという意味ではなくて、そういった、直接的ではない、世界の金融システムの危機の中での影響を多少でも受けた場合には、この場合には前の法律 と違う適用をしましょうという意味でこの条文にしたわけでございます。

○階委員 このお渡しした資料の右下に番号を振っていますけれども、その六ページ目をごらんになっていただきたいんです。早期健全化措置、先ほど松 野議員のお話にも出ていた十年前の早期健全化法の基準なんですけれども、これを見ていただくと、経営者がやめなくてはいけないのは、国際基準であれば 四%、あるいは国内基準であれば二%、そういうことで、この金融機能強化法よりは若干基準が下げてあるわけです。それと、あと経営責任の内容も、代表者の 退任というところのほかに、役員数の削減とかいうことで、結構早期健全化法のときの方が基準がきめ細かくなっていて、かつ明確なんです。
こういうことを金融機能強化法では、従来のやり方だと、大臣がおっしゃるように、四%を境に白か黒かということで、黒の場合は、経営責任、代表者はやめ なさいということで、かなり極端な区分けだったわけですよ。ところが、早期健全化法の基準でいうと、今言ったように、かなりグラデーションというか段階的 になっているということで、むしろこういうふうな枠組みにした方が、大臣がおっしゃるような今回の海外発の突発的な問題に対して、資本が欠損した場合とか の経営責任のあり方とかを考える場合に、こっちの方が整合的なんじゃないかなと思います。
これは提言なんですけれども、その経営責任の問い方を、今回のように一律に問わないとかそういうあいまいな言い方じゃなくて、より細かく具体的にしてい く、そして、やや緩和的な基準にするという方向もあるんじゃないかと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

○中川国務大臣 確かに、おっしゃるように、一律には問わないと言われると、それを信じてやっていた結果実は問われちゃったというようなことも、どういうケースでもあり得るとは思いますけれども、その可能性が高いという御指摘は、私もその可能性はあると思います。
ですから、この法律ができ上がりましたら、もう少し細かく具体的に、ポジティブリストにするのかネガティブリストにするのかはまだ決めておりませんけれども、もう少し具体的に、外からわかりやすくするような努力はしたいと思います。

○階委員 その方向の方が、多分注入に前向きになれるんだろうと思います。
それで、話はかわりますけれども、新銀行東京の問題です。
先般来、テレビの討論番組なんかでも、新銀行東京にこの法律で公的資金の注入ができるのかどうかという議論がなされているわけですけれども、これは、法律上は資本注入できるということでよろしいですか。

○谷本副大臣 階委員の御質問にお答えさせていただきます。
個別の金融機関にかかわる仮定の場合の対応については答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、適用対象機関から公的 資本参加の申請がなされた場合には、民間の有識者で構成される金融機能強化審査会の意見を聞きつつ、法令にのっとり厳正に審査し、国の資本参加の可否を判 断することになると思います。

○階委員 今、制度上はできるということなんですけれども、実際に新銀行東京に適用できるかどうかというところをちょっと考えてみたいんです。
このお渡ししている資料の一番最後に「新銀行東京の概要」という資料がございます。それで、今再建計画が走っているところです。一番最後の資料の一番下 の方に「再建計画の概要」というのがございますけれども、これで見ますと、総資産はどんどん減ってくる。来年の三月では五千百五十六億円だったのが、ちょ うどこの法律で公的資金の注入の申請期限である平成二十四年三月には、千三百五十九億までがくんと落ちるわけです。
そういう中で、今回の法律の立法目的は中小企業に対する信用供与の円滑化ということで、こういう資産ががくっと減るようなところに対しては、もちろん中 小企業への与信も当然減ってくるわけでして、法律上は注入の申請が可能であっても現実には注入されることはないと思うんですけれども、法の目的に照らして いかがですか。

○中川国務大臣 ですから、新銀行東京のことは報道を通じて私もいろいろ読んだり見たりしておりますけれども、現実に新銀行東京が仮に資本を注入し たいと言ってきたときに、経営強化計画を出していただいて、そして審議会で専門の先生方に御判断をいただいて、我々は我々のルールできちっとやって、そこ で判断をするということでございます。

○階委員 そもそも論として新銀行東京についてちょっと見てみますと、今まで自力では経営が成り立たない状況で、追加で株主である東京都が出資し て、何とか自己資本比率は維持してきた。また、週刊誌などでもいろいろ報道されていますけれども、また、きのうも行員が逮捕されたという記事も出ていまし たけれども、自力では営業力がないために、ブローカーのような、あるいは政治家も絡んでいると言われていますけれども、そういう口ききに頼った結果、ずさ んな融資というか、問題の融資がたくさん出ているということなんです。
それで、そもそも銀行法一条に目的規定というのがありまして、銀行の業務の健全かつ適切な運営を期するというふうに明記されています。それを考えてみる と、金融庁というのは、公的資金の申請を受理するかどうかというところを議論する前に、銀行法の目的からして、そもそもこのような銀行に免許を与え続けて いいのかどうか、そういうところから検討する必要があると思うんですけれども、そこはどうお考えになっていますか。大臣、お願いします。

○中川国務大臣 与えるときは、当然、手続を踏んで与えたわけでございます。その後、いろいろ経緯があったわけでございます。
ちょっと今手元に資料がないので言葉が正確じゃないということをお許しいただきたいと思いますけれども、十月の二十一日だったか何だかに向こうから返事 が返ってまいりまして、もう一度こちらから向こうに対して、こういうところはどうなっているんだ、こうなっているんだ、まことに大ざっぱな表現で申しわけ ないんですけれども、それを今向こうに問いかけて、その報告を今待っているところでございますが、いずれもこれはどこの銀行であっても、金融庁としてのや るべきルールとして、それにのっとって今やっているところでございます。

○階委員 その結果、銀行法の目的にそぐわないような、つまり、業務の健全かつ適切な運営を期することはできないということであれば、厳正な処分、場合によっては免許取り消しということもあり得るという理解でよろしいですか。

○中川国務大臣 具体的な銀行の仮定の話には私はお答えできませんけれども、とにかく、ルールにのっとってきちっとやるということでございます。

○階委員 新銀行東京の健全性に関してなんですが、口ききということが盛んに行われていたという報道があるわけですけれども、その口ききの実態について金融庁としてはどのような検証を行っているのでしょうか。

○谷本副大臣 個別の金融機関に係る検査の内容についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、検査では、信用リスク管理体制等の各種リスク管理体制のほかに、法令等遵守体制についても検証をしているところであります。

○階委員 口ききされる中には、大株主である東京都の関係者の名前もあるやに仄聞しております。また、政治家の名前も出ていたりしておりますけれども、そういう口ききというものはコンプライアンス上問題であるという認識は持っているということでよろしいですか。

○谷本副大臣 検査内容等個別のことはここでは答弁を控えさせていただきますが、一般論として、先ほどの繰り返しになりますが、法令等の遵守状況についてもしっかり検査をしているというところです。

○階委員 金融庁としてしっかり検査をしている中で、それでは、口ききの実態に関して何か情報公開をするとか、そういうお考えというのはないですか。

○谷本副大臣 口ききに関する報道等があることは承知をしておりますけれども、個別の金融機関の個別の融資に関する事柄については、お答えは差し控えたいというふうに思います。
これも一般論で申しわけございませんが、一般論として申し上げれば、金融機関においては適切な融資審査を行うことが重要であり、当局としても、検査監督を通じて、引き続き的確にモニタリングを行ってまいりたいと考えております。

○階委員 口ききの中には大株主が絡んでいるという報道もありますけれども、一般論で結構なんですが、大株主が株を持っている銀行の融資案件を紹介したりするということについては、コンプライアンス上どういう問題がありますか。

○谷本副大臣 一般論でということでありますから、個別案件ではなく一般論として申し上げれば、金融機関の融資に関しては、紹介の有無を問わず、適切に審査が行われるべきであると考えております。

○階委員 それは、株主であるかどうかは関係ないということですか。その株主であるから責任が加重されるということは金融庁としては特に考えていないということですか。

○中川国務大臣 責任が加重されるとかされないとか、大株主が絡んできたとか絡んでこないとかということを含めまして、どんな場合においても、あな たも私も元銀行員でございました、二人の銀行は二つとももうなくなってしまいましたけれども、しかし、ルールどおりにきちっとやらないと、当時の行内検 査、あるいは怖い大蔵省銀行局検査、あるいは日銀考査が我々はあったわけでございますから、それを思い出していただければ、上から大株主の人が来て何か無 理なことを言ったとか言わないとかいうことで話があっち行ったりこっち行ったりするということは、あってはならないことでありますし、金融庁もそういう金 融行政をやっているつもりでございます。

○階委員 今、大株主かどうかということにこだわったのは、銀行法上なんですけれども、五十二条の十四という条文に、国や地方公共団体以外なんです けれども、そういう公共団体以外の、五〇%を超える議決権割合を持っている株主に対しては、金融庁は銀行の経営の健全性を確保する観点から業務改善命令等 を発令できるというふうになっています。
そういうことからすると、法律の規定からしても、議決権が五〇%を超えるような株主については、銀行の経営をコントロールできる立場であるがゆえに、より銀行の経営の健全性について責任を負うんじゃないかというふうに思うわけです。その点についてはどう思われますか。

○内藤政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の点でございますが、銀行法におきましては、銀行の業務の健全性あるいは適切な運営というものを確保する観点から、銀行経営に実質的な影響力 を有すると考えられます主要株主として、銀行の二〇%以上の議決権を保有する者については、事前認可により適格性の審査でありますとか、あるいはその後 も、監督というものの対象にしております。
ただ、行政主体として地域住民の福祉の増進を図るという責務を有しております地方公共団体につきましては、株主として銀行経営の健全性を害するおそれが ある主体とすることにはなじまないという考えに基づきまして、国と同様に、こうした規制の適用対象から除外しているところでございます。
御指摘のような措置を銀行法上設けるということにつきましては、銀行の経営の健全性とかそういうことがございますので、地方公共団体につきましては、地 方自治という中できちっと管理されるというふうに考えておりますので、そういった観点でこの規定からは対象除外というふうにしているところでございます。

○階委員 規定から除外されているとしても、経営をコントロールできる立場には違いないわけで、経営をコントロールしている以上、新銀行東京の経営 の失敗に対しては、東京都、とりわけ、トップである石原都知事に責任はあると思うんですけれども、そこはどうお考えになりますか。大臣、どう思われます か。

○中川国務大臣 今、金融庁として、さっき申し上げたように再度の問い合わせをしている最中でございますけれども、その返事を待ってということにな るわけです。いずれにしても、先ほどの経営者の責任じゃございませんけれども、一般論として、きちっとルールにのっとって、経営者あるいはまた実質的な経 営者等々に対してどういう処分をするかしないかは、あくまでもルールにのっとってやっていきたい。
余り仮定の話でどんどんやっていくと、むしろ、純粋なルールでやっていかなければならないという我々の業務にちょっと厳しい御質問が来ると、なかなか我 々としてもそれができなくなるという可能性も今頭の中で思いながら御質問を聞かさせていただいているところでございます。

○階委員 ここも一般論で結構なんですが、五〇%超株主という経営をコントロールできる立場にある者は、やはり株を持っている銀行に対して何らかの責任を負うと思うんですけれども、そこはどうお考えになりますか。

○中川国務大臣 それは一般論として、株式会社に対して五〇%以上の株を持っている株主は、権利も責任も負うということは間違いございません。

○階委員 ということは、仮に新銀行東京に経営の失敗があれば、銀行法の目的にもとるような経営があれば、大株主は当然責任を負うということになりますですよね。

○中川国務大臣 仮の話にはお答えできません。

○階委員 この問題というのは非常に重要だと考えていて、そもそも、こういう銀行が今も存在し続けているのが銀行法の目的に照らしていいのかどうか というのを当局としては厳しくチェックしなくてはいけないというのが一つと、それで、これを実質的に追加出資という形で支えている東京都、この東京都の責 任というのもちゃんと問われなくてはいけないということだと思いますけれども、最後、ここについてお考えをお聞かせください。

○中川国務大臣 最終的に、金融庁として金融監督行政の中で判断をしていかなければいけない問題だと思っております。

○階委員 それでは、ちょっと話題をかえまして、今度の資本注入が果たして中小企業金融の円滑化に結びつくのかどうかというのは、先ほどから議論に なっているところですけれども、お渡ししている資料の七と書いてあるところをごらんになっていただきたいんです、下から三枚目ぐらいですか。今般、九月の 中間期の情報が新聞等に出ていますけれども、業績予想を下方修正した主な地方銀行ということでちょっとまとめたものです。
今回の資本注入というのは、中小企業金融の円滑化という目的を達成するための手段であるんですけれども、赤字に転落しているところが出ている中で、一つ は経営責任を緩めたということですけれども、赤字に転落したところなんかにしてみれば、ただでさえネガティブな情報が出ているときに、公的資金を申請した ということで風評が広まるということを懸念される、それで風評リスクを恐れて申請にちゅうちょをする、そういう事態も想定されるんですけれども、この点に ついては、どういうふうなことを対策として考えられますでしょうか。どうしたらそういう風評リスクに対してちゅうちょしないで公的資金の注入を申請するよ うになるか、そういうお考えはありますか。

○中川国務大臣 確かに、健全な金融機関がきちっとした貸し出しをするために、多分今の拝見した資料も、急速に持っていた資産の価値が減っていった とか、あるいは北海道なんかの場合には非常に経済が停滞しているとか、そんなようなことが重なってこういうことになったんだろうと思いますけれども、しか し、それに対して銀行としては、もちろん、赤字は出たけれども、きちっとやっていっているし、これからもやっていくわけでございますから、そういう前提で 資本注入をする。
そのときに、御指摘のように、あの銀行は何か国から資金を投入したらしいぞ、ひょっとしたらなんということが広がるということは、これはもう絶対に避け なければいけませんし、まさしく風評なんですよね。風評というのは事実じゃないということでございますから、事実じゃないことによって結果的にその地域の 金融機関の貸し出しがふえない、減ってしまうということは、これはもう大変に地域にとっては大きな問題でございます。
ですから、この場で十分、そうではないんだということをきょうも何回かやりとりをさせていただいておりますし、今の御質問もそういう御趣旨での御質問だ と思っておりますので、我々も、決してそうではない、健全な金融機関に対して、もっと地場の中小企業に貸し出しをしてもらいたいという意味で資本注入をす るんだという前提であるということを、改めてまたお答えさせていただきたいと思います。
〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

○階委員 おっしゃるとおりで、このお金は、経営が危ないから入れるんじゃない、貸し出しをふやすために入れるんだ、そこを明確にしたいというところがまずあると思います。
それと、最初は貸し出しをふやすため入れたお金でも、その後のいろいろな状況の変化、また、株式の相場が下がったとか、あるいは予期せぬ貸し倒れが生じ た、そういうことで結果的に中小企業の金融に回らない、目的外のところにお金が使われてしまう、そういうことを避けたい、避けなくてはいけないと思うわけ です。
それで、さっき言った風評被害を防ぐという意味でも、それから、今言った目的外の使用を防ぐという意味でも、単に資本注入を行うだけではなくて、その資 本注入をした結果、貸し出し可能額が、国内基準ですと二十五倍、国際基準だと十二・五倍ふえるわけです。そのふえた貸し出し可能額がちゃんと貸し出しに回 るように、そういう制度的な担保を設けなくちゃいけない。
例えば、これは提言なんですけれども、普通の勘定と別勘定を設けて、その勘定で中小企業への貸し出しのみを管理する。その勘定では中小企業への貸し出し しか使えないようにする。また、もう一つは、金融機関がプロとしての善管注意義務を果たして中小企業に貸し出しを実行したような場合には、そのような貸し 出しについて損失をこうむった場合には政府が補償してあげるとか、そういうようなやり方で、資本注入を行うだけでなくて、そのお金がちゃんと貸し出しに回 るようなそういう仕組みを設けなくてはいけないんじゃないかなと思うんですけれども、この考え方はいかがでしょうか。

○中川国務大臣 階委員も御経験だと思いますけれども、勘定を別にするということは、必要なものはやっておりますけれども、これは、基本的には、それによって貸し出しがふえるという目的のためのこの資本注入であるわけであります。
したがいまして、これは、ある意味では、健全な金融機関がちょっと世界的な状況等で影響を受けていることに対して健全性を保つということによって貸し出 しができるということでございますから、私は、一つずつそれをわざわざ別にして、ほかのところには行かずに、預保から来たお金をそのまま何々会社にすっと 行くというふうにやるほど厳密にやらなくても、午前中もございましたが、我々も半年に一度チェックいたしますし、また、金融機関はもちろんプロでございま すから、それは全体としてこれだけ入ったからこれだけ貸し出しに回った、あるいはこれだけ貸し出しがふえたということは、これはもう勘定を設けなくても、 私はおのずから理解ができるというふうに考えております。

○階委員 そういうやり方で風評リスクが生じないとかあるいはちゃんと貸し出しに回っている、そういうことが現に実現できればいいんですけれども、 実際のところは、これまでも別な先生もおっしゃっていましたけれども、貸し出しに必ずしも回っていない、貸し出しが必ずしもふえていないということもある わけで、この辺についてはさらに詰めた議論が必要なのではないかなと思っております。機会があれば、また改めて議論させていただきます。
それで、そもそも今回の法案が必要になった背景というのを考えてみたいんです。
自己資本比率規制、BIS規制がありますけれども、このBIS規制というのがやはりあるがゆえに、自己資本の一定倍率しかリスク資産を持てないという足 かせがあるわけです。それがあることによって、今回のように予期せざる有価証券の大幅な下落などが生じた場合、自己資本が減少して、中小企業向けの貸し出 しを含めたリスク資産を圧縮しなくてはいけなくなる、こういう状況が生じるわけです。これが貸し渋りとか貸しはがしにつながっているわけですね。
その一方で、自己資本比率規制というのは、本来、銀行の健全性を保つために入れられたというふうに理解しているんですけれども、要は、行き過ぎたレバ レッジ、負債への依存を防ぐという意味で入れられたというふうに考えていますけれども、逆に、それがあることによって、資産の上限が決められていることに よって、金融機関にとってみれば、少ない資産で高収益を生もう、具体的には証券化とかデリバティブとか、そういう簿外の取引、オフバランスの取引に傾注し てしまう。その結果、今回の金融危機の原因が生じているというふうにも思われるわけです。
自己資本比率規制というものが銀行の健全性を保つ上で本当にプラスになっていれば、これは存置すべきだと思うんですけれども、今言ったように、むしろ、 リスクのある簿外取引、そういうところに傾注してしまっているというような状況もあり、かつ、自己資本比率規制があるがゆえに貸し渋り、貸しはがしという ものも発生しているということですから、この自己資本比率規制というものについて、廃止を含めて抜本的な見直しをするということももう考えていいのではな いかと思うんです。
かなり大きな話ですけれども、この辺について大臣はいかが思われますか。

○中川国務大臣 ちょっと今のお話は理解できないんですけれども、自己資本比率があるからレバレッジがきかないということと、片っ方でそれによって貸しはがしが起きてしまうということ、何か逆の二つをおっしゃられたような感じがするんです。
いずれにしても、御指摘になりましたように、銀行の健全性を保つための自己資本比率というものがある、そしてそれは国際基準と国内基準とあるということ と、その中で、その金融機関がどういうポートフォリオで、例えば貸し出しに回すかとか有価証券に回すかとか、あるいは手数料の方に回すかとかいうことは、 それぞれの金融機関の御判断だろうというふうに私は思います。それは、状況によって、あるいは各行によって、あるいは地域によってそれぞれ違うわけで、む しろそれは、独自性というものを大いに発揮していただきたいと思います。
いずれにしても、今回は、おととい、総理からの指示によって、こういう世界の金融の異常な状況であるだけに、自己資本比率の一部弾力的な運用ということ についても検討せよという指示が出ましたので、ティア1の範囲を超えて株式を保有することにできるというような対策もとったところでございます。国内行に ついては、ある程度柔軟に国内で対応できると思います。
国際基準については、やはりこれは、各国が加盟している協定の中での作業でございますけれども、いずれにしても、日本の金融機関が、金融システムがそも そも健全であるわけでございますから、世界の中でどんな波風が立とうと、日本の金融システムをしっかり守り、日本の金融機関に頑張ってもらって、大事な日 本じゅうの中小企業にしっかりと融資やいろいろな相談に乗っていただけるようにしたい、こういうふうに思っております。

○階委員 端的に言うと、自己資本比率規制というのは、銀行の経営の健全性を維持する上で役に立っていると考えるのか、それとも、かえって簿外取引 をふやすことにつながって、むしろ金融危機の種をまいている、そういうことにつながっているんじゃないか、自己資本規制があることによって健全性を害して いるというふうにも考えられるんですが、大臣は、その自己資本比率規制、ここについては積極的に評価されているのかどうかということをお聞かせください。

○中川国務大臣 少なくとも、国際基準のBIS規制、自己資本規律というのは、日本でもアメリカでもヨーロッパでもやっているわけであります。
ですけれども、日本とアメリカでは全然違ったわけでございまして、まさにおっしゃったように、アメリカは、金融機関、銀行としてちゃんとしたものがあり ながら、全然オフバランスでとんでもないことをやっていた。これが世界じゅうにばらまかれて、日本も迷惑している。日本の場合は、ルールの中で、いろいろ と特色はあるにしても、厳しい経済状況の中、金融機関も、そして全国の中小企業も一生懸命今頑張っているわけですから、それを政府がきちっとお助けすると いうのが今一番大事なことではないか。
アメリカや世界から余計なものが飛んできたときに、その影響が少しでも及ぼされないように我々は努力をしなければいけないというふうに思っております。

○階委員 自己資本規制というのは、かなりいろいろな影響を呼んでいる、多分、金融危機にも影響していると思っているんです、私の考えですけれど も。ですからここは、各国そうなっているからということじゃなくて、ゼロベースで基本的なところから考えてもいいんじゃないかということで、私の問題意識 です。
では、ちょっと時間もあれなので、最後の質問にします。
円高が進んでおります。財務大臣としてお聞かせ願いたいんですが、政府として為替介入を検討する局面に来ていると思うんですが、一方で、過去の円売り・ ドル買い介入で外為特別会計にドル資産が積み上がっています。直近の為替レートで計算した場合、外為資産の時価と含み損益はどうなっているかということを まずお聞かせ願えますか。

○玉木政府参考人 円高が進みますと、保有外貨資産の評価損が増加いたします。現時点、例えばきのう現在ですと、一ドル九十五円という前提で計算で きますが、その場合、外為特会の保有する外貨資産の評価損は約二十三・九兆円になる。これに対して、現時点で、積立金をこうしたものを補うため等々の理由 で持っておりますけれども、それが十九・六兆円あるという状況にございます。

○階委員 済みません、最後の質問ですけれども……

○山本(明)委員長代理 時間が経過しておりますので。

○階委員 はい。
含み損になっている状況で、普通の投資家であれば損切りをするんだと思いますけれども、外為特会という性質上、こういう場面ではドルをさらに買い増さな くちゃいけない、ドル買い介入をして円高を防がなくちゃいけないということなんですけれども、そういう外為特会に課せられた役割からして、リスク管理とい うものが非常に大事だと思うんですが、そのリスク管理についてどうなっているのか、どういう方針をとられているのかということを最後に聞かせていただけま すか。

○中川国務大臣 介入の話は全く別といたしまして、御指摘のとおり、リスク管理というのは、非常に、外為特会だからということだけではなくて、我々がお預かりしているお金については細心の注意を払っていかなければなりません。
特に為替、とりわけこの数日の間に急激に円高になり、またきのうから少し戻しておりますけれども、こういう大きな変化というものは実体経済にも非常に大 きな影響を与えますので、特に現時点においては、このリスク管理というものが大事だということは御指摘のとおりでございます。

○階委員 時間が参りましたので終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。