7日、衆議院文部科学委員会では、来年4月に開校予定の秋田公立美術大学、札幌保健医療大学、岡崎女子大学の設置認可のあり方などにつき質疑が行われました。

田中真紀子文部科学大臣は、「小泉内閣の規制緩和で、大学の新設が事前規制から事後チェックに変わった。その結果、大学の数は増えたが生徒数は減り、倒産する学校も出ている。大学の乱立を止めて質を確保するため、大学の設置認可のあり方を抜本的に見直し、新しい認可の仕組みをもとに、三大学を含めて検討する」と答弁しました。

当初のマスコミ報道は、田中大臣は三大学を不認可にしたとして「暴走大臣」と揶揄していました。答弁を聴く限り、不認可にしたわけではないので「暴走」とまでは言えないでしょう。しかし、開校が迫ったこの時期に、新しい認可基準ができるまで認可を止め置くことは「急ブレーキ」の感があります。

実は1年前、政府の政策仕分けに参加した際に「大学の乱立を止めて質を確保すべき」という、今回の田中大臣と同様の議論をしました。日本では大学に入学する18歳人口が20年前から4割減です(205万人⇒120万人)。ところが、この間に大学の入学定員は2割も増加(47万人⇒58万人)。大学進学希望者の96%がどこかの大学に入学する一方、私立大学の4割が定員割れを起こしているのです。

当時私は、今回の田中大臣のように大学の設置基準を見直すのではなく、学生の卒業基準を厳しくして、教育力が高く卒業率も高い大学が生き残るようにすべきだと提言しました。大学関係者からは、幅広い中間層を維持するために大学は減らすべきでないとの反論がありましたが、私は、就職率が高い専門学校を強化する方が分厚い中間層を維持できると再反論しました。

最後の取りまとめは、「教育の質の確保と安定的な経営の確保に資するため、大学の教育の内容、例えば、生涯教育の拡充などへの転換を含む自律的な改革を促す」という少し柔らかい結論になってしまい、今も課題は残されたままだと感じます。

田中大臣は、この委員会の質疑の最後に、「三大学の新設については、現行制度にのっとり適切に対応する」と述べ、考えを変えるに至りました。しかし、「大学の乱立を止めて質を確保すべき」という大臣の問題意識に誤りはありません。今後は急ブレーキを踏むのではなく、高等教育の質の向上を目指す改革にアクセルを踏んで頂きたいと思います。