15日、社会保障と税の一体改革の関連法案について、民主、自民、公明の実務者間の修正合意が成立しました。しかし、民主党としてこの修正合意を了承したわけではありません。私は、この修正合意の内容に反対すると共に、修正合意した法案を直ちに衆議院で採決することにも反対します。

まず、修正合意の内容に反対する理由は、自民党、公明党の主張により、当初の民主党案が大幅に書き換えられていることです。特に重要なのは、最低保障年金に関わることです。もともとは、「すべての受給者が、所得比例年金と最低保障年金の合算で、概ね7万円以上の年金を受給できる制度」につき「平成25年の国会に法案を提出する」、となっていました(「社会保障・税一体改革大綱について」平成24年2月17日付け閣議決定)。

ところが、修正合意では、そのような記載は一切なく、「今後の公的年金制度に…かかる改革については、あらかじめその内容等について三党間で合意に向けて協議する」という確認書が取り交わされています。これでは、自民、公明が同意しない限り年金制度の改革はできません。「消えた年金」を追及してきた民主党が目指した年金改革が「消えた」のでは、笑い話にもなりません。

次に、採決に反対する理由は、「行革なくして増税なし」のはずが、「行革なくして増税ありき」になることです。野田総理は、来週21日の会期末までに衆議院での採決を目指すと伝えられています。その場合、党の行政改革調査会で国会に提出した「行政改革実行法案」は、審議すらされないまま増税だけが先行することになるのです。行革に消極的な官僚たちと長時間にわたり交渉に交渉を重ねて法案を取りまとめた者として、到底容認できません。

修正合意がまとまったことを受け、「決められない政治」からの脱却と評価するマスコミの論調も間違っています。「決められない政治」の弊害より、「目標を失った政治」の弊害の方がはるかに大きいことは、歴史が示しています。昭和6年12月10日付けの東京朝日新聞は、「目標を失った政治」と題する社説を掲載しました。総選挙で掲げた改革を行わず、目的もなく野党と協力しようとする当時の内閣を批判して、以下のように記しています。

「総選挙に呼びかけたすべてが虚偽であり、あるいは客観的情勢の変化によって、正反対にでもなるものであるとすれば、絶対多数も無意味であり、政党内閣も、議院政治も、その根底からくつがえってしまうのである。そこには国民の意思による政治もなければ、国民の政治的目標を根こそぎ奪い去るにひとしい。」東京朝日新聞(昭和6年12月10日)

その後、ほどなくして戦前の政党政治が崩壊し、日本が暗黒の時代に突入したことを、マスコミも私たちも忘れてはなりません。