17日、私が国会に提出した、被災地の相続人が相続放棄等を行う熟慮期限を今年11月末まで延長する民法の特例法が成立しました。

民法では、「自己のために相続があったことを知った時から3か月以内」の熟慮期間中に相続放棄や限定承認をしないと、相続を承認したものとして扱われます。しかし、相続するのは資産とは限りません。

もしも相続する資産より負債の方が大きい場合、熟慮期間が終わると相続人は新たな借金を背負うこととなり、元から借金がある人は、世代を超えた二重ローンを抱えることになってしまいます。

民主党の二重ローン対策チームでは、5月後半からこの問題に取り組み、法務省に対し、「膨大な相続が発生した3月11日から3か月が経過する前に、熟慮期限を延長する特別法を作って欲しい」と要請してきました。

しかし、法務省は、「3か月では短いという相続人は、家庭裁判所に延長の申し立てをすればいい」とか、「いたずらに期限を伸ばすと債権者の利益が害される」といった理由を挙げ、拒み続けました。

震災や津波で移動手段が乏しくなった多くの被災者にとって、家庭裁判所まで行くのは至難の技です。また、熟慮期限延長で債権者の利益が害されるといっても、もともと相続人から借金を返してもらうことは想定していなかったはずであり、実害はほとんどないはずです。

震災から3か月が経とうとしても一向に動かぬ法務省にしびれを切らし、私の方で衆議院法制局に手伝ってもらい、以下を骨子とする議員立法を作り、政府与党の了承を得て国会に提出しました。

①震災で生活が混乱している被災地の相続人(震災当時、熟慮期間が進行中だった相続人も含む。)の熟慮期限を一律に延長し、政府によれば「生活が落ち着く頃」とされる8月末に3か月を加えた11月末をもって延長期限とする。

②この法律が成立する前に熟慮期間が終わり、すでに相続を承認したと見なされている相続人についても、熟慮期間を復活し、上記の期限まで延長することとする。

国会審議では、弁護士出身の野党議員などから、「本来の熟慮期限を考慮せず一律に11月末を延長期限とするのはかえって不平等だ」とか、「一度熟慮期間が終わって確定した法律関係を覆すのは不意打ちに当たる」といった、憲法に絡んだ重要な指摘もありました。

しかし、裁判官、検察官出身者が多数を占める法務省と激しい議論を重ね、最後は法務省の了解も得て国会に提出した法案です。私や共同提案者の辻恵代議士が各議員の質問に丁寧に答え、最終的には衆議院、参議院ともに全会一致で可決しました。

まさに熟慮に熟慮を重ね、ようやく国会提出にこぎつけた「熟慮期限延長法案」。ねじれ国会の中、審議入りからわずか3日で成立しました。私のような一議員でも、その気になれば「熟慮断行」はできます。この国の最高権力者であれば、なおさらできるはずです。