3月は合格発表の時期です。希望の学校に合格して喜びに浸る受験生もいれば、不合格で悔し涙を流す受験生もいます。合否は時の運もありますが、学校できちんと授業を受け、指導に沿って勉強を続ければ、合格の可能性は次第に高まるはずです。これは、高校2年生と3年生を比べて、どちらが大学受験に合格しやすいかを想像すれば明らかでしょう。

もし、高校3年生よりも2年生の合格率の方がはるかに高いという高校があるならば、少なくとも大学受験という点では、その高校の存在意義が疑われます。高校ではありませんが、現在の「法科大学院(ロースクール)」は、まさにそんな状態です。法科大学院は、法曹(弁護士、検察官、裁判官)に必要な知識、能力を学ぶ大学院です。通常、大学などで法律を学んだ人は2年、そうでない人は3年学んで卒業します。そして、法科大学院を修了すれば法律家になるための素養が身に付いたとして、司法試験の受験資格が与えられます。

しかし、近年では法科大学院に通わず、「予備試験」に合格することで司法試験の受験資格を得ようとする人が増えてきました。法科大学院に通うと、お金も時間もかかる割に合格率が低いという現実があるからです。法科大学院の将来に危機感を持った文科省などは、苦肉の策として、法科大学院を修了する前年、つまり法科大学院在学中に司法試験を受けられる制度を作りました。この制度が初めて適用されたのが昨年の司法試験です。

その結果は、まさに法科大学院の存在意義を疑わせるものでした。在学中の人の合格率が約60%と、修了者の合格率33%のほぼ2倍に達したのです。これでは、法科大学院を修了する意味がありません。15日の法務委員会の質疑で、あべ文科副大臣に対し、このことへの問題意識と改善策を尋ねました。すると「法科大学院修了直後の受験生の合格率は55%で著しい違いはない。制度が始まったばかりなので様子を見る」旨の答弁。

そこで「問題意識が感じられない。修了直後ですら在学中の合格率を下回っている。法科大学院修了を司法試験の受験資格にする意味がない。やめるべきだ」と迫ったところ、「在学中であれ、修了後であれ、法科大学院全体としての合格率を高めることが重要だ」と開き直った答弁でした。私は、「受験生のことや、我が国の法曹養成制度のことなんかどうでもいい、法科大学院さえ成り立てばいいという発想だから失敗する」と反論しました。

その上で、小泉法務大臣に「法科大学院修了にかかわらず全ての人に司法試験の扉を開いた方が平等だ」と述べ、司法試験制度の改革を強く求めました。小泉大臣は、「努力していきたい、知恵も絞りたい」と最後に答弁。法科大学院の教授陣、文科省、法務省という、次世代の育成と公正な社会の構築に責任を持つ人々が今後どう動くか、注視していきます。