今年も3月11日が近づいてきました。衆議院の議員会館では、この時期になると岩手、宮城、福島の特産品の販売会が開かれ、食堂では3県の食材を使用したメニューが提供されます。6日の昼休みに私も顔を出し、岩手の鮭、いくら、そばを使った「はらこ飯・ざるそばセット」を味わい、ほや・サバを使ったおつまみなどを買って帰りました。

この行事は、10年ほど前に復興庁の発案で始まりました。もともと福島第一原発事故の風評被害を払しょくするために始まったものですが、この時期だけの食事や買い物で終わるのでなく、多くの人が被災地を訪ね、住みたくなるような仕掛けも必要です。被災地では少子化と高齢化、そして若者の流出により、復興を支える人材が減っているからです。

復興を支える人材を増やすためには、安定した好収入が得られる仕事を増やさなくてはなりません。しかし、最低賃金を見ると岩手は全国で最下位、首位の東京との格差は開く一方です。岸田政権は、賃上げした企業の法人税を減税する「賃上げ税制」を強化してきました。しかし、巨額の利益を上げ、蓄えている都市部の大企業と違って、地方の中小零細企業は法人税を納めていない赤字経営のところも多く、賃上げ税制の恩恵はほとんどありません。

地方で賃上げを進めるには、企業の稼ぐ力を高める必要があります。企業の稼ぐ力を表す数値として、従業員一人がどれだけの付加価値(≒粗利)を生み出しているかを示す「労働生産性」があります。この「労働生産性」が高い地域ほど、研究開発に必要な資産も多いという調査結果があります(2024年2月22日付日経新聞「経済教室」)。

それによると、岩手の場合、労働者一人当たりの研究開発資産は47都道府県で下から3番目です。これを上昇させれば賃金も上がる可能性が高まります。その意味で、研究開発資産の最高峰とも言うべき「国際リニアコライダー(ILC)」を岩手に誘致することは理に適っています。28日の財務金融委員会では、そうしたことを述べつつ、鈴木財務大臣に「地方の研究開発拠点を充実させていく必要があるのではないか」と尋ねました。

これに対し、「今回、企業が研究所などを地方に移転する際に適用できる『地方拠点強化税制』を延長し、昨年は『中小企業向け研究開発税制』を見直した」との答弁がありました。しかし、「賃上げ税制」と同じく赤字の企業には恩恵がなく、地方と都市部の研究開発資産の格差を縮める効果がどれだけあるのかもはっきりしません。

国際的に卓越した研究成果が期待できる一部の大学に補助金を支給する「大学10兆円ファンド」の運用益を、ILCなど地方の研究開発拠点づくりにも投入するべきです。