29日、財務金融委員会で鈴木財務金融大臣、黒田日銀総裁らに質疑を行いました。冒頭、同じ岩手出身の鈴木大臣に対し、岩手が生んだ宝ともいうべき大谷、佐々木両選手について、日本のWBC優勝に貢献したことへの感想を求めました。鈴木大臣は、「同郷の選手が大活躍をして日本の優勝、大会の成功に結び付いたことを大変うれしく思う」と率直な答弁。

ところで、両選手はいずれも日本人最速の165キロの球を投げます。このスピードはまさしく「異次元」です。165キロを待っている打者に対し、裏をかくために投げる「チェンジアップ」と呼ばれる遅い球ですら130キロを超えます。しかし、スピードの落差が大きいため、打者は戸惑い、打ち取られます。金融の世界で、この「チェンジアップ」を連投してきたのが、間もなく退任する日銀総裁の黒田東彦氏だったのではないでしょうか。

すなわち、2013年に黒田総裁が就任した際には、「異次元の金融緩和によって2年で2%の物価安定目標を達成する」と威勢のいい直球を投げ、金融市場も期待していました。ところが、①当初「戦力の逐次投入はやらない」と言っていたのに、2014年秋に金融緩和を拡大し、②2016年の初めには、その直前まで「やらない」と言っていたマイナス金利を導入し、③昨年暮れには、「金融緩和の効果を阻害する」と言ってやらないはずだった長期金利の上限を引き上げるなど、まさに「チェンジアップ」のように金融市場の期待を裏切り、その都度市場の混乱を招いてきたのです。

この日の質疑で、黒田総裁への評価を債券市場関係者に聴いたアンケート結果を取り上げ、「市場とのコミュニケーション」につき「評価しない」と「全く評価しない」の回答が合計87%にも上っていることを指摘。黒田総裁に対し、「市場との対話を軽視し、チェンジアップを投げ続けた結果がこの数字に表れているのではないか」と質しました。

これに対し、黒田総裁から「市場との対話は極めて重要であり、様々な形でコミュニケーションを高める努力をしてきた」との答弁があったため、さらに「債券市場関係者の評価が間違っているということか」と尋ねると、「金融政策として反省すべきとはまったく考えていない」と強気に言い放ちました。

呆れた私は、「まったく反省もないから独善的になって、市場との断絶が生まれ、市場のゆがみが生じることが分かった」と皮肉めいた言葉を言わざるを得ませんでした。「立つ鳥跡を濁さず」ということわざがありますが、間もなく就任する植田和男新総裁は、黒田総裁時代が去った後、濁り切った金融政策を浄化させなくてはなりません。黒く汚染された田んぼ(黒田)にきれいな水を張り、田植え(植田)をするのは容易ではありません。