東京オリンピックの熱戦が続いています。日本選手に限らず各国選手のコメントは、勝者であれ敗者であれ、強く印象に残ります。自らの限界を乗り越え、世界の頂点を目指してきた鍛錬の日々の長さと重さを感じさせるからでしょうか。

そんな世界の一流選手たちに、未曾有の大災害から被災地がどのように歩んできたかを感謝の気持ちと共に伝え、被災地の魅力を知ってもらうことが「復興五輪」の意義です。そうすれば、選手たちの発するメッセージによって、世界中の人々が被災地に思いを寄せ、震災復興の「風化」や被災地への言われなき「風評」を防げるはずです。現に、女子ソフトボール決勝で日本に惜敗したアメリカのエリクセン監督の「福島の桃はデリシャスだった」という言葉は、国内外で多くの反響を呼び生産者を勇気づけました。

ただ、この状況で海外の選手らが直接被災地を訪れ、交流や体験をする機会を設けることは困難です。それに代わるものとして、選手村にある約3000人の選手らが日々食事する「メインダイニング」で被災地の食材を提供したり、被災地の名産品を紹介したり、被災地の復興の様子を映像で流したりする工夫をすべきです。ところが、選手村の中で被災地の情報を選手たちに伝える努力がほとんど見られません。例えば、メインダイニングでは被災地の食材の提供はしているものの産地の表示はなく、大会後にホームページで掲載するとのことでした。これでは、エリクセン監督のような発信は期待できません。

このような現状を早急に改善するため、28日、立憲民主党の東日本大震災復興本部のメンバーで復興庁を訪ね、本部長代行である私と同僚議員から横山復興副大臣に対し、「『復興五輪』を通じた被災地の情報発信と風評払拭に向けた申し入れ」を行いました。併せて、復興庁が後援して東京都内で8月7日まで開催中の「東北ハウス」と選手村の連携も求めました。

「東北ハウス」は、世界に向け、羽生結弦選手らが震災復興支援への感謝の気持ちを示し、東北・新潟の風景や伝統工芸、酒食などの魅力を最先端の映像も交えて伝える、いわば「東北のショールーム」です。コロナ禍の影響で海外からの来場者は少なくなっていますが、オンライン技術を使って一人でも多くの選手らに見聞してもらうことは、「復興五輪」の目的にも沿うと思います。

残念ながら、一部の国の選手団は、科学的根拠に基づかない偏見から、選手村で使われる福島県産などの食材を忌避しているようです。こうした動きを放置すれば「逆復興五輪」になりかねません。世界の注目が日本に集まる今こそ、国を挙げて「復興」の発信に取り組むべきです。復興庁をはじめ政府に対し、引き続き働きかけていきます。