前代未聞のやり方で検察ナンバー2の地位に居座ってきた黒川弘務東京高検検事長は、辞め方も前代未聞でした。そもそも黒川氏は、公平中立に犯罪を捜査、起訴し、法と証拠に基づいて厳正な処分を求める検察官であり、検察組織の信頼を守る重責を担っていました。

にもかかわらず、

①外出や営業の自粛要請中の東京都内で、賭博罪にあたる「賭け麻雀」を何度も行い、

②以前から「賭け麻雀」を行ってきたのに、「常習性」を認めず「訓告」という軽い処分を受けて多額の退職金をもらえるようにしたり、

③ハイヤーの送迎など報道関係者から過剰なサービスを受けることで検察組織の信頼を大きく傷付けたりしたのです。

そして安倍政権は、このような人物を法務省や検察の中で重用してきただけでなく、定年を迎えても「法解釈を変更した」というありえない理屈で勤務延長し、検察トップの検事総長を狙える地位においてきました。黒川氏と安倍政権の責任は極めて重大です。

黒川氏が辞職した22日、法務委員会で森法務大臣に対し、

「黒川氏が退職すれば業務の継続に重大な障害が生じるからという理由で定年延長したのに、黒川氏がやめてもすぐに後任が見つかるなら定年延長は必要なかったのではないか」

と質したところ、

「黒川氏の不祥事によって業務の継続に著しい支障が生じているので、後任を急ぎ探さなくてはならない」

と問題をすりかえました。要は、黒川氏でなくても同じ地位は務まったということです。

質問の最後に、黒川氏の責任を厳しく問わなかった責任や、本来不適格な人物につき定年延長を行い、検察の業務の継続に重大な支障を生ぜしめた責任を理由に挙げ、法務大臣の辞任を求めました。森大臣は、

「つらい道だが、検察の信頼回復のために、できることをしたい」

と消え入るような声で答弁しました。

「つらい道」を歩んでいるのは、むしろ「コロナ禍」で苦境にある国民の方です。とくに、森大臣の地元である福島県民をはじめ、東日本大震災の被災者は、復興へのつらく長い道を歩んでいた途中で、新たな重荷を背負わされました。今週は、復興特別委で復興庁の存続期限を10年延長する法案が審議され、私からも苦境にある被災地の事業者への金融支援や未利用地の活用方法を提言しました。

「震災の時に検察官が最初に逃げた」という虚偽の発言をし、自ら検察の信頼を損なった森法務大臣に「検察の信頼回復」をなし得るとは思えません。不要不急の定年延長を強行した検察庁にこだわるよりも、復興が遅れて期限延長を余儀なくされた復興庁の業務を後押しし、一議員として復興に貢献するのが、彼女にふさわしい仕事だと思います。