昨年の国会では、公文書の改ざんに加え、政府が公表してきた統計数値の誤りが次々と明るみにでました。①厚労省による「労働時間の調査」では残業時間の集計に誤りが発覚し、働き方改革法案の一部が撤回されました。②「障害者の雇用割合」では国税庁や国交省など多くの中央省庁で42年も数値を水増しして法令の基準を守ったように見せかけ、③「失踪した技能実習生への聞き取り調査」では最低賃金以下で働いていた外国人が7、8割いると見られるのに法務省は0.8%と集計していました。

①と③は、国会での私たち野党の追及がなければ今でも隠ぺいされていたはずです。そして、今回新たに発覚したのは、厚労省の「毎月勤労統計」について、東京都の大企業に対して本来行うべき調査を怠り、実態より低い賃金の統計を平成16年から公表していたというものです。この統計は雇用保険や労災保険の給付額の算定根拠にもなります。

厚労省によれば、実態より低い賃金の統計が使われたことで、累計で537億円も保険金が少なく支払われたとのことです。さらに問題なのは、厚労省内部では昨年1月に調査方法の誤りが分かっていたのに、これを改めるどころか計算方法まで変えて誤りを隠ぺいし、統計をねつ造してきたことです。

11日、国民民主党ではこの問題に関して緊急に関係府省を呼び、事実関係の説明を受けました。驚いたのは昨年1月以降の隠ぺい、ねつ造工作について厚労省の担当者が「復元」と呼んでいたことです。「復元」とは本来の姿を取り戻すことです。誤りを正すどころかばれないようにごまかすことは「復元」ではなく「嘘の上塗り」です。

おまけに、この問題で保険金が少なく支払われた約2千万人への不足額の支払いを「追加給付」と呼んでいました。役所の不手際で生じた不足額を補うのですから、「被害救済」か「損害賠償」と呼ぶべきです。また、そもそも何のために本来のやり方と違う調査方法にして統計をゆがめてきたのか、不正の動機や原因についても説明を求めましたが、担当者は「調査中」として説明を避けました。ひょっとすると厚労省は、省益のために雇用保険等の支出を少なくし、浮いたお金を他の支出に回したかったのかもしれません。

ちなみに、総務省には政府の重要統計を扱う統計局という組織があります。民主党政権時代に総務政務官として統計局を担当しましたが、省益となる予算や権限は持たず、公正な統計を作ろうと日夜努力していました。今回の問題も、統計局関係者の指摘によって発覚したものです。「消えた年金問題」以降、データの扱いをめぐる不祥事が絶えない厚労省に重要統計は任せられません。専門スタッフがそろう統計局への移管を考えるべきです。