3dd0b454f3960a25fec54732e6f590a0_tn60816日、自民・公明両党は、来年度の「税制改正大綱」を決めました。平成29年4月に予定される消費税率10%への引き上げの際、酒類と外食を除く食料品や、新聞について、税率を8%に据え置く「軽減税率」を含んでいます。そもそも税率を据え置くだけなのに「軽減」というのは、安倍首相が忌み嫌う「レッテル貼り」そのものです。しかも、両党の「軽減税率制度検討委員会」ですら、以下の三つの問題点があることを認めていました。

①対象品目の悪循環~対象品目を幅広く設定すれば、税収が減って財政赤字が拡大する。かといって、対象品目を限定すれば、負担軽減の実感や消費者の納得感が減る。対象品目から漏れた業界には不公平感も生まれる。やがて見直しの声が大きくなって、対象品目が徐々に広がり、財政赤字が拡大する悪循環になる。

②事業者の事務負担の増加~事業者が商品などを仕入れる際に支払った消費税は、納める税額から差し引くことができる。しかし、軽減税率で商品ごとに違ってくる仕入れ税額を正確に計算するには、「インボイス(適格請求書)」の作成が必要。事業者にとって事務負担が重くなり、会計帳簿やレジの変更などで費用もかかる。

③低所得者対策にならない負担軽減効果~財務省の試算によると、仮に酒類を除く食料品を対象とした場合、平均年収が1000万円を超える世帯では、約2万円軽減されるのに対し、平均年収が300万円の世帯では、約1万2千円しか負担が軽減されない。軽減税率の恩恵が高所得者に大きく及ぶため、税収の減少も大きい。

こうした問題を無視し、選挙対策ともいうべき軽減税率の導入が決められました。これによって約1兆円の税収減になりますが、それを埋め合わせる財源は決まっていません。財源が見つからなければ財政赤字が増えます。財政が悪化すれば円の信用も下がり、悪性インフレで物価が上がり、2%の軽減税率分は簡単に吹き飛んでしまう危険があります。

民主党はかねてから、1年間の生活必需品の消費推定額の一定割合を、低所得者を中心に払い戻す仕組み、「給付付き税額控除」を導入すべきだと主張してきました。そうすれば低所得者に絞ってより大きな軽減が可能となり、税収もさほど減少しません。税の専門家の圧倒的多数が、こちらの仕組みに賛成しています。一見、安くていいように見える軽減税率ですが、「安かろう悪かろう」という言葉通りです。新聞も「軽減税率の罠」に取り込まれた以上、私たちが国会を通じ、正論を主張し続けていきます。