DSC08307岩手山も中腹まで雪化粧し、秋も深まってきました。31日は、世界文化遺産に登録された橋野高炉跡を視察し、4年後のラグビーW杯への取組みを伺うために釜石市を訪ねました。それに合わせ、地域再生を志す方々の活動拠点とするために改修された「南部曲がり家」のお披露目式や、地元の海の幸に加え、内陸のかぼちゃなどの野菜や遠野産のホップを使った生ビールを味わいながら三陸鉄道で大船渡まで往復するツアーに参加し、岩手の暮らしをずっと支えてきた農業の有り難さを感じてきました。

DSC08298その農業が、先日大筋合意されたTPPによって打撃を受けるのではないか。農業者だけでなく多くの国民が不安を抱いています。29日、農水省は主な農産物21品目について、国内農業への影響をまとめた資料を公表しました。しかし、影響を金額で示していないため、農業全体でどれだけの影響があるか分かりません。また、品目ごとの分析結果を見ても、「特段の影響は見込み難い」、「影響は限定的」と言いながら、TPP対策の必要性を述べるなど矛盾しています。

例えば、今が旬のかぼちゃについては、輸入品が3割以上、しかもそのほとんどがTPP加盟国からのものです。TPPが発効すれば関税が直ちに撤廃されますが、農水省は、「国産との時期的な棲み分けがされている」として「影響は限定的」とします。にもかかわらず、「長期的には、国産かぼちゃの価格の下落も懸念されることから、生産性向上等の体質強化対策の検討が必要」という結論になっています。安倍政権が聖域として守ると主張してきた、米や麦についても、「輸入の増大は見込み難い」としながら、価格下落の懸念があるして「更なる競争力の強化が必要」とされます。

これでは、国民の不安は消えません。そもそも交渉経過に関する情報が明らかにされていないため、政府が国内農業を守るためにいかなる努力をしてきたのかも不明です。日米貿易摩擦が激しかったころ、「『NO』と言える日本」という本が注目されました。国際交渉において、日本は自国の利益や意見をもっと強く主張すべきだということが書かれていました。

今回の農水省の影響分析は非常に歯切れが悪く、日本農業の聖域も守れなかったと言わざるを得ません。農業は日本において産業面だけでなく、地域や文化、環境にも重要な役割を果たすことを日本政府はもっと声高に主張すべきでした。アメリカに追従するだけでなく、「農(NO)と言える日本」が今こそ必要です。