10増10減夏の甲子園が今年100年目を迎えるそうです。ふるさとの学校の熱闘に声援を送る夏の風物詩です。40年ほど前に夏の甲子園は「一県一代表」となり、全国47都道府県から49代表が集まる形式がすっかり定着しました。これとは対照的に、参議院の「一県一代表」は、来年の通常選挙から見直されることになりました。

28日の衆議院本会議において、自民党などが提出した参議院の選挙区定数を10増10減する法案が可決成立し、徳島と高知、鳥取と島根は、二つの県を一つの選挙区とする「合区」になりました。背景には、平成25年の参議院通常選挙で一票の格差が4.77倍であることを「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等」とした、平成26年の最高裁判決があります。その中で、最高裁は、「国会において、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど・・・できるだけ速やかに、・・・不平等状態が解消される必要がある」と述べたことから、今回の「合区」に至りました。

しかし、この法案が成立しても、格差はなお3倍程度残ります。最近の最高裁の基準からすると、次の選挙で再び「違憲状態」とされる危険があります。民主党では、合区する県をさらに増やし、格差を2倍以内にする対案を公明党などと共同で提出しました。自公連立政権ができた平成11年以来、はじめて自民党と公明党で法案の賛否が分かれましたが、結局自民党案が過半数となり成立しました。

いずれにしても、「合区」という方法を導入したことで、今後人口が減少して、合区対象となる県では、参議院議員を選出できないという事態がありえます。岩手県も安閑としていられません。四国四県と同じ面積に参議院議員が二人(三年ごとに一人改選)しかいないのに、もしも合区になって二つの県で二人しか選べないということになったら、地元の声が国政に反映されにくくなります。もちろん、一票の格差が大き過ぎるのは問題ですが、主権者である国民には、選挙以外でも地元の国会議員に接触できる機会が極力保障されるべきです。衆議院選挙では人口に応じて300の小選挙区が決められてきました。例えば、定数1の岩手2区は、東京都、神奈川県、埼玉県の8割程度の面積を有しますが、これらの地域には50人以上の定数があります。地元の衆議院議員との接触しやすさという面では既に大きな格差があります。

 今回の改正は、次の参議院選挙までに違憲状態を解消すべしという時間的な制約もあり、「合区」の仕方が議論の中心となりましたが、これで終わりではありません。法律の附則にも、「選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得る」と書き込まれています。参議院は地域代表制にするなど、本当の意味で「抜本的な見直し」を行うべきと考えます。