裁判前々回もご報告しましたが、法務委員会では裁判員法の改正案につき真摯な議論を続けてきました。一般市民が刑事裁判の審理に加わり判決を下す裁判員制度は、犯罪被害を負った方やそのご遺族にとっては、「諸刃の剣」です。一般市民の正義感が裁判に反映されるプラスの面と誰にも知られたくない辛い経験を赤の他人に知られてしまうマイナスの面とがあるからです。

12、13日に行われた参考人質疑では、性犯罪の被害に遭われた方などの支援を行っている望月晶子弁護士や、見ず知らずの犯罪歴多数の男に最愛の娘を惨殺、放火された荻野美奈子さんらにご意見を伺い、質疑を行いました。

望月弁護士からは、被害者の心情に配慮し、性犯罪を裁判員裁判の対象から外すか、そうでなければ外すかどうかを被害者が選択できる制度に改めるべきだという提言がありました。また、性犯罪をこのまま裁判員裁判の対象にするとしても、裁判の証拠として写真よりイラストなどを用いるべきことなど、裁判員裁判のマイナス面をなくする方向の意見が出されました。

一方、荻野さんからは、裁判員裁判で死刑判決が出て「この国には間違いなく正義がある」と思ったこと。しかし、高裁、最高裁で死刑判決が破棄されて無期懲役になったため、「被害者の命は殺人犯の命よりそんなに軽いものなのか。高裁や最高裁に被害者の命の尊さは到底わかるはずもない」と思ったことを踏まえ、裁判員裁判を続けるなら、高裁も最高裁も裁判員裁判にしてみんなが納得できる制度に改めるべきだという提言がありました。また、裁判の証拠は裁判員の方にきちんと見て頂かないと、悲惨さが伝わらないというご意見もあり、上記の裁判員制度のプラス面をさらに伸ばそうという立場でした。

いずれも重要な提言、意見ですが、今回の改正で、政府はこうした問題を十分に検討していません。犯罪被害者の意見を十分に聴かず、専門家や官僚が中心となって法案を作ったからです。今回の法改正では不十分だとして、15日の採決の際、3年後に制度を見直すべしとする規定を民主党など野党が中心となって追加しました。

そして、政府に対し、次回の見直しの議論が国民の視点から行われるよう、裁判員経験者や犯罪被害者などの意見を反映するための十分な配慮を求める附帯決議も行いました。邪悪で理不尽な犯罪のために心身に回復しがたい傷を負った方々にとって、少しでも納得できる刑事裁判となるよう、私もこの問題には地道に取り組んでいきます。