東日本大震災により岩手などでは大半の地方選挙が夏以降に延期されていますが、0422法務委員会3全国の多くの地域では昨日まで統一地方選挙が行われました。残念ながら戦後最低の投票率となったところも多くあります。投票率が下がれば下がるほど一部の人の力で政治が動くようになり、社会全体の常識や利益からかけ離れた政治になる危険が高まります。政治が道を誤らないようにするためにも、すべての人に選挙権を行使して頂かなくてはなりません。

平成21年に始まった刑事裁判の裁判員制度も同じような悩みを抱えています。裁判員候補者に選ばれながら、辞退する人や、呼び出しに応じない人が増えています。裁判員候補者のうち呼び出しに応じた人の割合が、初年度の40%に対し、去年は27%まで下がりました。選挙権と違って、裁判員候補者は理由を偽って辞退したり、正当な理由なく欠席したりすると罰金や過料も負わされるのに、この数字は深刻です。裁判官と異なる一般市民の健全な常識を刑事裁判に反映させようとした裁判員制度の趣旨を損なわないようにするため、出席率を上げなくてはなりません。

22日の法務委員会では、裁判員法の改正について質疑を行いました。私は上川大臣に対し、出席率低下に危機意識を持ち、辞退した人が真に辞退の理由があるのかどうかをサンプル調査して悪質なものには厳しく対応すべきだと主張しましたが、大臣は「趣旨の徹底と理解の増進に全力を尽くす」という抽象的な答えで、危機感が感じられませんでした。

また、裁判員が時間と労力をかけ悩んだ末に出した死刑判決が、上訴されて上級審で覆されることも最近目立つようになりました。そもそも裁判員裁判で出した判決には、同席する三人の職業裁判官のうち少なくとも一人は賛成しています。これを覆すのであれば、例えば、上級審においても一審の裁判員の意見を聴くなど、裁判員の判断を尊重する手続きを踏むべきです。

この問題意識を大臣にぶつけましたが、裁判員裁判の上訴のあり方を見直す考えはないとの答弁でした。裁判員の意見が上級審であっさり否定されるなら、「やっても無駄」という虚しさから出席率はますます低下するのではないでしょうか。政府の改正案には、複雑困難な事件は裁判員制度の対象から外し、職業裁判官だけで審理するという内容も含まれています。こうした官尊「員」卑の姿勢では、裁判員の出席率向上は到底望めません。