19日、国土交通省が全国の基準地価を発表しました。東京、大阪、名古屋の三大都市圏で地価が5年ぶりに上昇。日銀が国債などを大量に買って市場にお金を流す「異次元の金融緩和」を実行したため、投資マネーが流入し、不動産投資が活発になったようです。

私は、平成3年に当時の日本長期信用銀行(長銀)に入行しました。話題のドラマ「半沢直樹」と同じ「バブル入行組」です。大口融資先には、折からの金融緩和で業績を伸ばしてきた不動産業者やそこに融資するノンバンクが名を連ねていました。

ところが、都市部での異常な地価上昇が社会問題となり、政府が不動産融資を規制したり、日銀が金融引締めで金利を引き上げたりしたことから、これら大口融資先の資金繰りが行き詰まってしまいます。結果、バブルは文字通り泡と消えましたが、銀行の不良債権も大幅に増え、平成10年に長銀が経営破綻するなど深刻な金融危機が起きました。

バブルで日本経済は一時絶頂期を迎えましたが、バブル崩壊後は金融機関だけでなく日本企業の多くが、積み上がった借金、不良資産、過剰な雇用の整理縮小に追われ、低迷期に入ってしまいました。バブルで得た利益を「倍返し」で払わされたようなものです。

もし今回の金融緩和がバブルを招いたら、その反動は倍返しどころでは済まない可能性があります。なぜなら、日銀は4月に長期国債の保有額を2年間で倍の190兆円にすることを宣言し、すでに6月末時点で国内のすべての銀行の保有額を超える150兆円もの国債を保有しています。

バブルを収束させるには国債を売って市場からお金を吸い上げる必要がありますが、国債を大量保有する日銀が売れば国債の価値が急落し、これまで低金利で売れていた国債が高金利でしか売れなくなります。そうなれば、価値が急落した国債を抱える金融機関や投資家に損失が発生するだけでなく、長期金利の上昇で現在も年10兆円を超える国の借金の利払いが急増し、住宅ローンや事業者向け融資の利払いも増え、政府、金融機関、投資家、一般企業、そして個人に、広く深刻な影響が生じるからです。

こうした事態を避けるために、日銀は今後なるべく国債を買い増しせず、政府も国債の発行を減らすようにするべきです。安倍内閣は国債を減らすことはせず、今年初めの10兆円を超える補正予算に続き、大規模な補正予算を組む方針のようです。バブルの倍返しの恐ろしさを考えているようには思えません。