「名は体を表す」とよく言いますが、「名が体を表さない」場合もあります。政府が今年3月に行う自殺対策強化月間のキャッチフレーズを、「あなたもGKB47宣言!」にしようとしたのは、その例でしょう。

「GKB」はゲートキーパーベーシックの頭文字、「47」は47都道府県を指します。ゲートキーパーとは「見守る人」、即ち、悩んでいる人に気付いて声をかけ、話を聞き必要な支援につなげる活動をする方々を指します。平成19年の閣議決定でその養成が政府目標とされるなど、自殺対策にゲートキーパーは欠かせません。

これを全国に広めようという意図で、政府は、人気アイドルグループ「AKB48」をもじったキャッチフレーズにしたようです。しかし、6日の参議院予算委員会では、民主党の松浦大悟議員が「人の生死と向き合う自殺対策の言葉としてふさわしくないのではないか」と撤回を求めました。

担当の岡田副総理は「既に決まったことだ」と素っ気ない答弁でしたが、石井予算委員長からの再検討の要請もあり、最後は野田総理が「見た瞬間、自分も違和感を感じた。過ちを改むるにはばかることなかれだ」と答え、撤回されることになりました。自殺対策に取り組んできた多くの方々の意向に沿った妥当な結論です。

今回のように、国会の場で与党議員が政府の案に異を唱えるのは珍しいと思いますが、党の会議ではよくあります。私が副会長を務める政策調査会の法務部門でも、先日、政府が国会に提出予定の「少年鑑別所法」の名称を議論しました。

「鑑別所送り」と言うと不良少年の烙印を押されるイメージがあり、「鑑別」という言葉にも、少年をモノか動物と同じように扱う非情さがあります。しかし実際の少年鑑別所は、専門家が非行少年と真摯に向き合い、心身の状態や生育環境を調査分析し、その後の処遇に反映させる重要な役割を果たしています。また、各地域で少年の非行や犯罪を防止するための活動も行っています。

そこで少年鑑別所という名称を改めるよう、私も強く主張し、新法の下では通称として「法務少年支援センター」を使用し、定着状況を見て法律上も名称変更を考えることになりました。「名が体を表さない」ことで身内の大臣が国会で矢面に立たされないためにも、政策調査会という舞台裏での政府と党の議論が大事です。