23日から、衆議院の東日本大震災復興特別委員会で復興基本法案などの審議が始まりました。この特別委員会は、これから次々と国会に提出される震災復興のための法案を審議する重要な場です。岩手3区の黄川田徹代議士が委員長、私も委員になっています。

審議3日目の25日は、岩手を始め、被害が大きい五つの県の商工会、農協、漁協の代表者を招き、被害の実態や政府への要望などをお聞きしました。代表者の方々は、普段は予算委員会が開かれる第一委員室の閣僚席に着き、代わる代わる真摯で率直なご意見を述べられました。

中でも印象に残ったのは、JA岩手県中央会の長澤壽一会長が最後に語った、JA釜石支店の栗沢金融課長の逸話です。

震災直後、栗沢さんは、

地震だ、私は、金庫を閉めて、書類を整理整頓して続いて避難をするから、みんな一足先に避難せい

と部下に命じました。栗沢さんは一人だけ残って書類もお金もちゃんと金庫にしまいましたが、不幸にも避難する前に津波に襲われました。津波が引いた後、戻った職員は、きちんと閉じられた金庫を目にします。誰かが金庫を開けようとして、鍵がないことに気付きました。

鍵はどこさ行った。

津波で流されたのだろうと思いつつ鍵を探していたところ、栗沢さんのご遺体が発見されました。

金庫の鍵は、栗沢さんのぎっちり握った手の中にありました。

命を賭けて職責を全うした農協職員の話に誰もが心を打たれ、時に野次と怒号が飛び交う第一委員室が静まり返りました。

まことに精神力といいますか責任感といいますか使命感といいますか、JA岩手県の職員にもそういう職員があったということを語り継いでまいりたい。

長澤会長は、そう決意を述べ、話を終えました。

憲法で国会は「国権の最高機関」と定められています。その役割は、予算や法案を審議したり、政府の責任を追求したりすることに留まりません。

この国と国民にとって忘れてはならない大切な事実に光を当て、記録に残し、後世に語り継ぐこと。その役割の重要性を改めて感じました。