*以下は、本日公表された小澤一郎氏弁護団による「今後の対処方針について」と題する書面です。

東京第五検察審査会(以下「第五検審」)は,本年9月14日付けの小澤一郎氏に対する起訴議決において,平成16年10月の陸山会による土地購入の事実と同会による小澤氏からの4億円の借入れの事実が同会の収支報告書に正確に記載されなかったことをもって,政治資金規正法違反の罪で起訴すべきとしました。

しかしながら,後者の事実も含めた収支報告書の記載如何については,当初の告発及び東京地検の2度にわたる不起訴処分の対象とはなっておらず,第五検審の1度目の議決の対象にもなっていません。

ところが,検察審査会法上,強制起訴のためには検察審査会が同一対象について2回起訴を求める議決を要するのであります。つまり,今回の第五検審は, 起訴議決の対象について1回しか議決しなかったものであり,ここに重大かつ明白な法律違反が存在します。

これは法律的には無効というべきものであり,刑事訴訟手続以前の,行政処分に関する問題であります。そして,この段階で裁判に熟しており,救済を後に引き延ばす理由がありません。そこで,当弁護団としては,小澤氏が違法・無効な刑事訴訟手続の進行により被る深刻な不利益を回避すべく,行政訴訟を行ってきたところであります。

しかし,先般当弁護団から申し立てた特別抗告・許可抗告に対する最高裁の決定において,第五検審の起訴議決の違法・無効については,行政訴訟ではなく,後の刑事訴訟の中で司法判断を求めるべきものであるとされました。

このような訴訟方法における交通整理は,小澤氏が違法・無効な起訴議決に基づく刑事訴訟手続を甘受せねばならない不利益を一切考慮しないものであり,行政訴訟において司法が果たすべき役割や行政訴訟の裁判を受ける権利を放棄したに等しく,甚だ遺憾であります。

ただし,最高裁が今回の決定で,起訴議決の違法・無効については刑事訴訟手続の中で判断を求めうるとしたことは,極めて重要な意味を持ちます。なぜなら,当弁護団が起訴議決の違法・無効を刑事訴訟手続で主張した場合に,刑事裁判所が行政処分だからという理由で判断を拒否することはできなくなったからです。

むしろ,刑事訴訟手続の冒頭でまず起訴議決が違法かどうかの論点について決着を付けないと,犯罪事実に関する通常の審理に進めないことを意味すると言えましょう。だとすれば,当弁護団としては,行政訴訟でのこれまでの主張を,今後は刑事訴訟手続の中で主張すれば必要かつ十分であるということになります。

以上の理由により,当弁護団が先に東京地裁に提起している行政訴訟の本案の訴えについては,本日これを取り下げることとし,所定の手続をとりました。

今後,当弁護団としましては,刑事訴訟手続に全精力を集中し,そもそも検察審査会が権限を逸脱して行った起訴議決に基づく指定弁護士による起訴手続自体が無効であることを訴えて,早期に裁判の終結を求めるのはもとより,公判において小澤氏が無実であることが明らかになるよう弁護活動を展開して参る所存であります。