9日、盛岡が生んだ逸材、西武の菊池雄星君がプロ入り後初めて実戦のマウンドに立ちました。ランナーが出ると極端に球威が落ち、コントロールも乱れたようです。ランナーが出るとバッターに加え、各ランナーや相手のベンチ、味方の野手の動きなど、あちこちに神経を使い、考えることも多くなります。

華々しい活躍を期待していたマスコミの間では、「高卒新人なのに理屈先行で考え過ぎ」だとし、「未完の大器」に終わる危険もささやかれています。しかし、あれだけ考えて野球に取り組んでいる選手は東大野球部にもなかなかいません。技術面・体力面と併せ、素晴らしい才能だと思います。

ただ、あまりに考えることが多すぎると、その才能をフルに生かすことはできません。雄星投手は試合後に大ベテランの工藤投手から「頭で考えなくても体が勝手に動くようになる」と、3000回のシャドーピッチング(ボールを使わないで投げる動作をする、バッターの素振りと同じような練習)を勧められたとのこと。

自分の投球フォームを考えなくて済むようにすることで相手に頭脳を集中させようというわけで、適切なアドバイスだと思いました。必ず甲子園の輝きを取り戻すはずです。

一方、政治の世界でも「ゆうせい」に関心が集まっています。本来であれば12日に「郵政改革法案」を閣議決定して国会に提出するはずでしたが、延期されました。郵便貯金や簡易保険の預かり限度額を引き上げるべきかどうかについて意見がまとまらなかったためです。

引き上げ派は、「全国的な郵便局ネットワークを維持するためには貯金や保険が安定した利益を得られるよう、今よりお金を集めやすくするべき」と主張しますが、現状維持派は、「限度額を引き上げると地域金融機関から郵政にお金が流出し、地方の金融サービスに支障が生じる」と主張しています。

双方に理がありますが、注意すべきは、貯金などをたくさん集めて規模が大きくなったからといって必ずしも安定した利益が保証されるわけでないということです。集めたお金はいずれお客様に返すべきものであり、その間の運用が失敗すれば利益を生むどころか経営破たんにつながるリスクがあります。アメリカでは金融危機を踏まえ、金融機関の規模が大きくなり過ぎないよう、新たな規制を設ける動きもあります。

こちらの「ゆうせい」も、未完の大器と言わせず、末永く活躍してもらえるような改革に仕上げなければなりません。