大谷翔平選手らが活躍するメジャーリーグは、今年から新たなルールを導入。審判のストライクやボールの判定に疑問があれば、打者、投手、捕手に限り、ABS(ロボット審判)で判定のやり直しを求められるようになったのです。今シーズンは始まったばかりですが、ABSによって、当初の判定が半分以上も覆っています。7日も山本投手と岡本選手の日本人対決で三振の判定が覆り、直後に岡本選手が二塁打を放つというシーンがありました。

これまでは、審判の投球の判定は覆すことができないのが野球の常識でした。判定に抗議をする選手もいましたが、判定が変わるどころか、審判を侮辱したとして退場処分となることすらありました。ABSの導入は審判の権威を損なうという批判もありますが、プロの審判も人間であり、ミスはつきものです。ミスを認めない審判よりもミスを直ちに修正できる審判の方を観客は好み、ABSの導入は評判がいいようです。

一方、国政では再審制度の見直しが焦点になっています。「再審」とは、無実の罪で有罪が確定したえん罪の被害者を救済するための仕組みです。刑事裁判は三審制で有罪が確定し、再審はこれを覆すものです。三振でアウトになった打者がABSで判定のやり直しを求めるのと似ている気がします。しかし、野球の審判以上に権威を重んじるのが刑事司法の世界。刑事事件の起訴をする検察官、判決を下す裁判官、いずれもミスを認めたがりません。

結果、現在の再審制で、裁判のやり直しを求めるのは極めて困難となっています。まず「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」を発見する必要があります。ABSで言えば判定が誤りであることを示す拡大画像のようなものです。刑事裁判では検察官がこうした決定的な証拠を握っていることが多く、長年にわたり開示を拒んだ「袴田事件」のような例もあります。

また、裁判所が再審開始を決めても検察官が異議を申し立てると、再審は始まりません。ABSで言えば、打者が再判定を求め、審判が認めたにもかかわらず、相手の捕手が拒んで試合が中断してしまうようなものです。再審で判決の誤りが明らかになるのを最も嫌がるはずの裁判官が再審を決めたのなら、検察官に口を挟む権利を与える必要はないはずです。

国会では、こうした問題点を解決する法案を、私も所属する超党派の議員連盟で作り、審議を求めてきました。一方、政府でも再審制度の見直し法案を準備していますが、問題点はほぼ手付かずです。ただし、予算審議では政府のいいなりだった自民党の中で、議員連盟に所属する議員らが奮闘し、政府案は見直されることになりました。政府の出した法案を与党が見直しを求める異例の「再審」です。これで政府が過ちを改めないようなら、党派を超えた結束により、ABSのように迅速かつ正確な再審制を国会で創るしかありません。