高市政権は、「責任ある積極財政」を経済財政政策の基本方針としています。「積極財政」は安倍政権なども掲げていました。その前に「責任ある」という枕詞が付いています。その意味について、高市首相は、「積極財政」で「強い経済」を作り、「成長率の範囲内に債務残高の伸び率を抑え、政府債務残高の対GDP比を引き下げていくことで、財政の持続可能性を実現」することだと、今国会冒頭の所信表明演説で述べています。
分かりづらいので、金利5%の借金1億円の元本も利息も返さず、年1億円の利益を上げている企業を考えます。この会社が新たに1千万円の借金をして設備投資したとします。これによって、翌年の借金は、過去の1億円の借金にかかる未払い利息500万円と新たな借金1千万円の合計1500万円、割合にして15%、増えることになります。
一方、設備投資の効果で利益は1億円から1億2千万円に20%増えたとしましょう。そうすると、借金の増加率15%は利益の伸び率20%の範囲内に収まります。結果、借金の利益に対する割合は1億÷1億で100%だったのが、1億1500万÷1億2000万で95.8%に下がり、前の年より借金の負担率は軽くなります。これと同じようなことを国のレベルでやろうというのが、高市首相が言う「責任ある積極財政」なのです。
確かに現時点では、国の借金の平均金利は年0.8%程度なのに対し、企業の利益の伸び率に当たるGDP成長率は3.7%程度で約3%上回っています。多少借金を増やしても同様の成長率が維持できれば「政府債務残高の対GDP比」は下がりそうです。高市首相はこれに目を付けたのか、「過去の借金を放置したまま、新たに借金をいくら増やしたか」を示すプライマリー赤字をなくすという歴代政権の目標を、取り下げる旨国会で答弁しました。
しかし、日銀の「異次元の金融緩和」が終わり、直近の国の借金の金利は1.7%程度まで上昇しています。GDPの成長率もこの3年ぐらいは物価高によってかさ上げされています。さらに、政府の長期見通しでは、経済成長が続いても2040年頃には借金の増加率が成長率を上回り、以降は「政府債務残高の対GDP比」は悪化していくとされます。
3年程度の財政の好調が今後も続くと考えるのは安易で危険です。「責任ある積極財政」は持続可能性がなく、次世代にツケを回す無責任なやり方と言わざるを得ません。ちなみに、14日、岩手の至宝たる大谷翔平選手は、世界最高峰の米国メジャーリーグで3年連続の最高殊勲選手に輝きました。しかし、この3年間の好成績は彼にとって本来の力を発揮した結果ではありません。故障やリハビリを乗り越えながら圧巻の成績でした。今後もさらなる成長が期待できそうです。3年続く好成績でも、日本の財政状況とは意味合いが違います。