先月末、国が保有していた「SBI新生銀行」の優先株式2,300億円を、親会社であるSBIホールディングスが買い取り、ようやく公的資金が完済されました。同銀行の前身は、日本長期信用銀行(長銀)です。かつて長銀は、興銀(現みずほ銀行)や日債銀(現あおぞら銀行)と同じく「長期信用銀行」という特殊な銀行でした。債券(金融債)を発行して資金を集め、長期の大型融資で国内外の経済発展に貢献する公共性の強い銀行でした。
しかし、バブル景気に踊って不動産融資を拡大し、バブルがはじけると膨大な不良債権を抱えることになりました。私が入行した1991年以降はその処理と株価等の低迷に苦しむこととなり、1998年にまさかの経営破綻。史上初の「一時国有化」を経て、2000年に新生銀行となり、2022年末からはSBIグループに入りました。
経営破綻の前後には長銀の財務体質を改善するため、合計4,166億円の資本注入を政府から受けましたが、今回の完済までに27年もかかりました。しかも、経営破綻後は、預金者を保護するための資金や、不良債権の処理に伴う損失補填のための資金なども国から得ていて、これらは返済義務がありません。そうしたことも考えると、長銀のために使われた公的資金は総額で11.7兆円、そのうち政府が回収できた額は現時点で8.4兆円(今後多少増加する可能性あり)、差し引きで3.3兆円の損失が発生した計算です。
長銀に籍を置いた一人として、貴重な公的資金に穴を空けてしまったことは痛恨の極みです。二度とこうした事態を招いてはならないと思い、「SBI新生銀行」の動向に注目していました。そんな中、21日にSBIホールディングスが岩手県の東北銀行と「戦略的資本業務提携」を行うことが発表されました。「両社の経営の独立性を尊重しながら、地方創生および持続可能な社会の実現に貢献する」ことを目的としています。
この件に関し、29日に「SBI新生銀行」を訪ね、中枢で活躍する長銀時代の同僚からお話を伺いました。東北銀行をはじめ地域金融機関との連携を強化し、「地方創生」に貢献するという経営戦略に対し、私からは地方の人口減少が進む中、老朽化する官民のインフラ整備や、街のにぎわいを生むランドマークの創造、エッセンシャルワークの人手不足の解消、6次産業や再エネ産業の育成・発展、地元中堅企業の上場支援など、岩手のような地方が取り組むべき課題を挙げ、地域金融機関と一緒に取り組んで欲しいと伝えました。
長銀の金融界での略称は、「LTCB」でした。「Long Term Credit Bank(長期信用銀行)」の頭文字を取ったものです。これからは「Local Theme Challenge Bank(地方の課題に挑戦する銀行)」として公に尽くし、再びLTCBに光が当たる日が来ることを期待しています。