私が弁護士になったのは、今からちょうど20年前の2003年です。法曹と呼ばれる弁護士、裁判官、検察官になるには、司法試験に合格する必要があります。当時の司法試験は、非常に狭き門でした。この年は、史上最多の4万5千人あまりが受験して1170人が合格、合格率は2.5%でした。私も銀行に勤めながら何度も挑戦し、ようやく合格しました。

しかし、2003年を境に司法試験の受験生は減少し続け、昨年は3082人が受験して合格者は1403人、合格率は45%でした。これだけ合格率が上がれば、もっと受験生が増えてもよさそうなものですが、低迷が続いています。その原因は、以前と違って司法試験が自由に受験できず、以下の二つのルートのどちらかを選ぶ必要があることです。

一つは、2004年に始まった、「法科大学院」に入学し、修了した後に受験するルートです。こちらは、大学を含めると受験までに長い期間と多額の学費がかかります。それでいて司法試験の合格率は37%と平均を下回っています。いわば「コストパフォーマンス」と「タイムパフォーマンス」が悪いルートです。当然ながら、法科大学院は人気がなく、定員割れが続いています。昨年の法科大学院の修了者は、わずか1321人でした。

もう一つは、「予備試験」を受け、合格した後に受験するルートです。予備試験は誰でも受けられますが、昔の司法試験のように狭き門です。昨年は1万3千人が受けて472人が合格、合格率は3.6%でした。ただし、この狭き門を突破して司法試験に臨んだ受験生は、昨年では97%が合格しています。予備試験の合格者に対し、翌年さらに司法試験を課すのは「屋上屋を重ねるいやがらせ」のように思えます。