コロナ禍と物価高が続く中、事業者の皆さんはこれまで通りの利益を確保するのが困難になっています。とりわけ売上高が1000万円以下の規模が小さい事業者の場合、もともと利益も蓄えも少ないため、事業を継続することにも支障が出ているところもあります。そうした小規模事業者に追い打ちをかけるのが、1年後に迫った「インボイス制度」です。

「インボイス」は日本語に訳すと「適格請求書」。売上金額とそれにかかる消費税率、消費税金額を区分けして記載するものです。同じ情報が記載してあれば、「請求書」に限らず「領収書」や「レシート」でも「インボイス」にあたります。ただし、「インボイス」を発行するには、原則として来年3月末までに税務署に登録をしなくてはなりません。

来年10月から、企業等が納める消費税の金額は、「インボイス」に記載のある自分の支払った消費税額を、顧客から受け取った消費税額より差し引いて計算します。例えば、10万円の商品を仕入れる際に1万円の消費税を払い、20万円で売って顧客から2万円の消費税を受け取った企業は、仕入先から「インボイス」をもらえれば(2―1=)1万円の消費税を納めれば足ります。一方、「インボイス」がないと2万円を納めなくてはなりません。

当然、企業等は「インボイス」を出さない相手に対し、①取引中止か、②増えた消費税分の値引きを求めるでしょう。これを避けるため、相手方である小規模事業者が「インボイス」を発行すれば、別の問題が生じます。売上が1000万円以下の小規模事業者には消費税の納税義務がありませんが、「インボイス」を発行すると納税義務が生じるのです。財務省は、「インボイス」発行によって納税義務を負うことになる小規模事業者は全国で161万件に上り、平均納税額は約15万円で総額2480億円の消費税の増収になると見ています。

企業等と取引を行う小規模事業者はもともと立場が弱く、消費税を納めていなくても利益が十分ではありませんでした。「インボイス」を発行すれば増税となり、発行しなければ取引に不利となる。まさに「進退両難」の状況です。27日、インボイス制度に反対する声優の団体とお会いしました。団体が独自に行ったアンケートでは、「声優の7割以上は年収300万円以下、インボイス制度が導入されれば2割強が廃業を検討する」とのことでした。

これ以外にも、建設業の一人親方、会社業務で利用する個人タクシーや飲食店、シルバー人材センター関係者、小売店と直接契約する農業者など、日常身近な小規模事業者の方々にも影響が及びます。岸田政権が目指す所得向上や起業促進とも矛盾します。立憲民主党では一早くこの問題を認識し、すでに3月に「インボイス制度廃止法案」を国会に提出しています。多くの国民の理解と協力を得て、「ワンボイス」で法案の成立を目指します。