17日から通常国会が始まりました。前日の未明には、トンガ沖の海底火山の大噴火により岩手県の沿岸部などに津波警報が発令されました。国内でも多くの方が避難し、漁業関係者や受験生などに被害や影響が生じました。ところが、初日の岸田首相の45分間にわたった施政方針演説はそのことに触れず、お見舞いの一言もありませんでした。19日の衆議院での代表質問で、立憲民主党の小川淳也政調会長は、真っ先にその理由を尋ねました。

岸田首相は、「施政方針演説においてこの種の事案を言及するかどうかについては、様々な要素を総合的に勘案して判断するものでありますが、いずれにせよ、政府としては、常に緊張感を持って対応に万全を期してまいりたい」と答弁。判断の理由を聞いているのに、判断の方法しか答えず、「いずれにせよ」の決まり文句で話をうやむやにしています。

泉健太代表は、森友問題で公文書改ざんを強いられ、自殺した赤木俊夫さんの遺族による国家賠償請求の裁判を取り上げました。国が請求を認諾して支払うことになった1億円以上の金額は、法律に基づいて改ざんを指示した人物に負担を求めるべきではないかと尋ねました。これに対し、岸田首相は「今般の賠償金については、国が個々の職員に対して求償権を有するとは考えておりません」と答え、これも理由を述べませんでした。

翌日行われた参議院の代表質問で、立憲民主党の参議院議員会長を務める水岡俊一議員は、ガソリンや灯油の価格の高騰を踏まえ、価格が一定の水準を上回ったらガソリンなどにかかる税金を引き下げて負担を減らす「トリガー条項」を発動すべきではないかと提案しました。これに対し、岸田首相は、「発動した場合、ガソリン、軽油の買い控えや、その反動による流通の混乱、国、地方の財政への多大な影響等の問題がある」とし、提案を拒否。

しかし、この答弁は官房長官が従来から述べている発言を繰り返しているだけです。例年に増して寒さが厳しく、「買い控え」どころか「買い増し」が必要となっている現状を考えていません。財政への影響も理由に挙げていますが、先の補正予算も含めて借金を増やし続ける政権がこれを持ち出しても説得力に欠けます。

これ以外にも各党から、「コロナ対策」、「新しい資本主義」、「デジタル田園都市」など岸田首相の肝いり政策について様々な質問がありましたが、施政方針演説で述べたことの繰り返しが多く、質問に真正面から答える姿勢は感じられませんでした。岸田首相は「聴く力」はあっても「答える力」が弱いようです。来週からの予算委員会では、代表質問と異なり、いい加減な答弁があれば更に質問を重ねることができます。国民が理解し、納得できる答弁を引き出せるまで、岸田首相に粘り強く質問したいと思います。