「地下鉄サリン事件」が発生してから、20日で30年になりました。事件では14人がお亡くなりになり、6千人以上が負傷されました。今も後遺症に苦しんでいる方が数多くいらっしゃいます。当時の恐怖と混乱を思い出しながら、祭壇が設けられた地下鉄霞が関駅の事務所に伺い、理不尽にも亡くなられた方々のご冥福をお祈りしてきました。
当時私は、霞が関駅で降りて職場の銀行に通っていました。その日は、いつもより少し早く仕事を始めていましたが、妻からの緊急の電話で大事件が起きたことを知らされました。もしも普段と同じ午前8時ころに霞が関に到着する車両に乗っていれば、間違いなく事件に巻き込まれていたはずです。私が乗り降りするホームで救助に当たった駅員さんが亡くなったことを後に報道で知り、まったく他人事とは思えませんでした。
地下鉄の車内で同時多発的に猛毒のサリンをばらまくという前代未聞の無差別テロを引き起こした、松本智津夫(麻原彰晃)率いる「オウム真理教」。その関与が疑われる事件が以前から各地で起きていたにもかかわらず、教団施設に強制捜査が入ったのは地下鉄サリン事件の二日後でした。当時の法制度では、各都道府県警の組織は横の連携がない「縦割り」となっていて、オウムのように広域的・組織的に犯罪を行う集団への対応は難しかったようです。その後、法律は改められましたが、もっと早くに手当てをしておくべきでした。
現在国会では、ダムや発電所、公共交通機関などを制御するコンピューターを狂わせ、無差別テロを引き起こす「サイバー攻撃」を未然に防ぐための法案が審議中です。この法案は、政府が平時から通信を監視し、「サイバー攻撃」の兆候を見つけたら警察や自衛隊が相手のシステムに入って「無害化」する措置を取れるようにするものです。いわば、サイバー攻撃を「やられる前にやる」ことから、「能動的サイバー防御法案」とも呼ばれます。
無差別テロにつながる「サイバー攻撃」を防ぐ上で、真に役立つ法案なら早急に成立させるべきです。しかしながら、「能動的サイバー防御法案」には心配な点もあります。第一に、政府が平時から通信を監視することは、憲法が保障する「通信の秘密」に反しないかという点。第二に、外国政府やその関係組織からの「サイバー攻撃」を防ごうとして「無害化」する場合、相手国との間で紛争にならないかという点です。
政府は、第一の点については、監視が適正にされているかを独立機関がチェックするとし、第二の点については、「無害化」が国際法で許されるかを外務大臣がチェックする、といった説明をしています。ただし、具体的なチェックの体制、方法は明らかではありません。こうした懸念を解消しながら、「サイバー攻撃」による無差別テロに万全の備えを講じます。