img_8853_1憲法は公布から70年、制定時の姿のまま維持されてきました。同じく我が国の基本法である民法の債権関係の規定はさらに古く、公布から120年もの間、現代語化と若干の条文追加を除いては制定時と変わらず今日に至っています。

ちなみに、債権とは、お金を貸した人が借りた人に返済を求める権利や、事故に遭った人が加害者に損害賠償を求める権利など、ある人が他の人に何らかの行為を請求できる権利のことです。私が銀行の社内弁護士時代、一番勉強し、活用した法分野でもあります。

その民法の債権関係の規定について、政府は「社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする」として、120年ぶりの全面改正を目指しています。その法案の審議が、衆議院の法務委員会で始まりました。改正事項は膨大な数に上りますが、18日の私の質疑では、「法定利率」と「融資の個人保証」について取り上げました。

まず、法定利率とは、当事者間で利率の約束がない場合に適用される利率のことです。これまでの民法では5%でしたが、今回は当初3%とし、金融情勢次第で3年ごとに見直す案になっています。金田法務大臣は、現在の貸出金利の水準などを考えて3%にしたと説明しますが、日銀のマイナス金利政策によって最近の国内銀行の貸出平均金利は0.7%ぐらいです。さらに、3年ごとの見直しルールをよくよく調べると、この先3%から上がることはあっても、下がることは現実的にありえないルールになっています。こうしたことを踏まえ、私が「法定利率は当初3%ではなく2%でもいいのではないか」と提案したのに対し、金田大臣は「ご指摘の趣旨はわからぬでもない」と答弁しました。

次に、今回の法案では、事業のための融資について個人が保証する場合、原則として保証人の意思に基づく公正証書がないと無効とされます。債権者からの取立てによって、保証人が想定外の損害を被らないようにするためです。ところが例外も多く定められ、会社が融資を受ける場合は、その経営者はもちろん、経営に関わらない平取締役であっても公正証書なしで保証人になれます。金田大臣は、こうした保証人を認めないと中小企業の資金調達が阻害されると答弁しましたが、今や金融当局は、融資する金融機関に対し、経営者自身の保証であっても必要最小限とするよう指導しており、時代遅れの感があります。

以上2点だけでも、「社会・経済の変化への対応」という法改正の目的は中途半端に終わっていることが分かります。120年ぶりの全面改正が、真に社会・経済の変化に対応し、国民に分かりやすいものとなるよう、国会の場でじっくりと審議し、問題があれば積極的に対案や修正案を提出していきたいと思います。