28日、経済産業委員会で甘利経済産業大臣に質疑を行いました。悪徳商法対策の充実・強化を図るための「特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案」がテーマです。

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悪徳商法というと、押し売りやマルチ商法、キャッチ・セールスなどを思い浮かべますが、日常生活の中で知らないうちに被害に遭っているかもしれません。実は、先日、私の息子も本当は眼が悪くないのに、首都圏でチェーン展開をしている某メガネ店で検査を受けたら「視力も乱視もよくならない」と言われ、翌月一括払いのクレジットでメガネを買わされました。次の日、眼科医で再検査したらメガネ店の検査がいい加減だったことが発覚し、契約を取り消そうとしましたが、すぐには応じませんでした。
それもそのはず。今回改正対象となる法律では、店舗での販売や翌月一括払いのクレジットを使った悪徳商法は規制対象になっておらず、改正後もこの点は変わらないからです。

この事例を挙げつつ、甘利大臣に対し、「悪徳商法撲滅のためにはもっと規制対象を広げるべきではないか」、「悪徳業者の資産は凍結して消費者に還元すべきではないか」と質しましたが、「営業活動の自由にも配慮しなければならない」と述べ、明快な回答は得られませんでした。

国家権力による過度な規制は控えるべきですが、「バレなければ何をやってもいい」というモラルのない事業者が儲けて真面目な事業者が損をするような社会では、消費者にとっても事業者にとってもマイナスだと思います。

【議事録】

169-衆-経済産業委員会-17号 平成20年05月28日

○階委員 おはようございます。民主党の階猛と申します。本日は、このような場で質疑の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私は今、財務金融委員会の方に所属しておるのですけれども、民主党の方の人権・消費者調査会の方で消費者オンブズマンの検討などにも加わらせていただいております。
また、昨年七月、議員になったわけですけれども、それまで、銀行ですとか証券会社ですとか、金融機関の社内弁護士として勤務しておりました。その中で、金融商品販売に関する法律問題についてもいろいろ実務経験を積んできております。
ちょっと宣伝めいてしまいますけれども、こういう「銀行の法律知識」という中で、私が友人の渡邉さんという弁護士と共著で書いたんですけれども、「金融商品販売業務」という章を私書きまして、その中で、金融商品販売のあり方などについて法律の規制がどうなっているかといったことも踏まえて書いております。そういったことに関連づけながら、きょうは、特商法と割販法について事例を交えてちょっと質疑をさせていただきたいと思います。
お手元に一枚の紙をお配りしているかと思います。これは実は、私の家庭で実際に起きたことでございます。
店舗販売の事例である、またクレジットカードの翌月一括払いの事例であるということで、今回の法案の直接の適用対象ではないということなんですが、こういうような悪徳商法の事例もあるということで、問題提起の意味も含めて御紹介したい。
また、眼鏡販売という医療行為と商取引が密接に関連するような分野で所管の官庁がどういうふうになっているかなど、仮に今回の改正部分も含めて、両法の規制、つまり、割販法と特商法の規制がこのようなケースにも適用になるとすれば検討に値する論点がいろいろあるだろうというふうに思いまして、事例を題材にしながら質疑を進めさせていただきたいと思います。
それで、事例の方をちょっと御説明させていただきます。一枚の紙を見ていただきたいんですが、何が起きたかということでございます。
まず、私の息子は中一なんですけれども、野球をやっておりまして、外で一日練習をしていると目が疲れるので、紫外線対策のため度つきではない眼鏡の購入を希望しました。
そこで、眼鏡屋さんに行ったところ、いきなり、視力、乱視の検査をやってくださいと言われまして、それで勧められるままにやりました。そうしたら、両目が〇・四でひどい乱視である、そういうような診断を言われたわけです。
ちなみに、そのときに、息子は自分は目がいいと思っていたものですから、そんなことはないです、教室の一番後ろの席から黒板の字が見えますと言ったそうなんですが、そこの店員は、お姉さんだったそうですけれども、それは目を細めているから見えるのよというふうに優しく言ったそうです。
そういうやりとりを踏まえて眼鏡の購入を店員が勧めてきたわけですけれども、その際に、この先、視力も乱視もよくならないので絶対に眼鏡は必要だ、そういうような言われ方をしましたものですから、家内の方も心配になって、当初は度つきの眼鏡など買うつもりはなかったものを買うことにしたということで、クレジットカードの翌月一括払いでお店の方で購入したというのがまずあったわけでございます。
ところが、自宅に帰って、うちの家内もいろいろ不審に思いました。本人も、実はこの眼鏡店で、自分も念のために視力をはかってみようとして検査をしたんだそうです。そうしたら、自分の方も目がいいと思っていたのに、非常に低い視力になっていて、不思議だなと思ったので、翌日改めて眼科医で検査をしました。
息子の検査をしたところ、やはり、実は視力も乱視も問題なくて、両目が一・二で乱視も軽微だ、眼鏡をつくったらかえって目が悪くなりますよ、そういうふうに眼科の先生に言われたそうです。
早速、けしからぬということでお店の方に連絡して、きのう買った眼鏡の契約は取り消してくれと言ったんだそうですが、眼鏡のお店の人は、そんなことはできません、法律上できませんということで、当初取り消しを断ったそうです。
ところが、うちの家内も、僕が国会議員であるとは言いませんが、弁護士なんだから、そういうことを言うと裁判ざたになりますよとか結構強気で出たところ、お店の方は、では、本来は取り消しはできないんだけれども、今回は特別に、お買い上げになったレンズが壊れたということにして合意解除にしましょう、そういうようなことにして合意解除にしたということでございます。
こういった事例を踏まえてなんですけれども、まずもって一番最初のところです。度つきでない眼鏡の購入を希望していたにもかかわらず、目的外の商品を勧めているという行為がまずお店の方であったわけでございます。
私の専門である金融商品の販売の方でいきますと、適合性原則に関する規定というのが金商法ができたときにきっちりと定められていまして、その中では、顧客の知識、経験及び財産の状況に加えて、金融商品取引契約を締結する目的、契約を締結する目的というものもちゃんと勘案して商品を勧めなさいという規定があるわけです。
ところが、特商法とか割販法の規制を見ますと、適合性原則らしきものは政令の方にありますけれども、契約締結の目的というものが入ってありません。契約締結の目的を入れれば今回のようなケースは防げるんじゃないかと思うんですけれども、この点についていかがでございましょうか。

○甘利国務大臣 訪問販売などの場合におきまして、強引、執拗な勧誘など問題のある勧誘行為が行われないのであれば、消費者のニーズを掘り起こすべくさまざまな提案を行うことまで規制をすることは適当ではないと考えますが、一方で、現行の特定商取引法におきましては、消費者が本来必要としていない商品であるとかサービスについて訪問販売業者が虚偽をもって勧誘をする、勧誘をして消費者が誤認をした場合には、契約の取り消しを求めることが可能となっているわけであります。
例えば、委員御指摘の事例でありますが、すなわち、視力が悪くなっていないのに、実は、検査をした瞬間悪くなっていますよと言って眼鏡を販売するようなことが訪問販売業者によって行われたケース、あるいは、よくある事例でありますが、家の土台がシロアリに食い荒らされている、いないにもかかわらずそう言って説明を行って対応を迫るようなケースが該当し得ると考えられます。
こういう場合には、指示などの行政処分を行うことが可能となっております。

○階委員 金融商品販売の世界では、契約締結の目的も勘案して勧誘しなさいというふうになっていますので、ぜひその点、今後の検討課題としてやっていただければと思うんですけれども、いかがでございますか。

○寺坂政府参考人 金融商品取引法に御指摘のような規定が入っておるということは承知をしてございます。
この規定に関しましては、例えば、資産を堅実に運用したいというようなお客様に対してハイリスク・ハイリターンの商品を勧めるといったようなケース、そういったようなケースを考えて、契約締結の目的に照らして不適当な勧誘というような条項が入っているというふうに理解をしてございます。
訪問販売の場合は、今大臣から御答弁申し上げましたような、さまざまな提案を行うこと自体、それを規制することが適当かどうかということについては、さまざまな議論があり得るというふうに思ってございます。特定商取引法そのものは、訪問販売等の特定取引を対象にした法律でございます。
別途、消費者契約法が店舗販売も含めました一般的なルールとしてあるわけでございまして、消費者契約法そのものに関しまして、委員御指摘のような適合性原則にかかわる条文がないわけでございますけれども、そういった消費者行政法体系全般の中で、要すれば、実態を見ながら検討をされるべきものというふうに考えてございます。

○階委員 次に、今回の問題は、視力、乱視の検査がいいかげんにされていたということで、こういった眼鏡購入、眼鏡を売らんかながためのいいかげんな視力検査ということについて、これは多分、視力の検査といった医療にかかわることですが、厚労省の御管轄になるのかなと思うんですが、厚労省ではどういう対応をしているのか。
例えば、眼鏡販売店での視力検査の方法であるとか、視力を検査する機械の性能であるとか、担当者の資質などについて何らかの基準を設けたり、そしてそれへの適合性を定期的に検査したり、あるいは基準に適合しない不適切な業者に指導、処分を行ったりといった行政の対応はされているのかどうか、そこをお聞かせ願えますか。

○中尾政府参考人 一般論としてお答えいたしますと、眼鏡を必要とする顧客が、自分の目に適当な眼鏡を選択する場合の補助として行う程度の危険性がほとんどない視力検査であれば、医師等の資格を持たない者でも行うことは可能でありますが、その範囲を超えた、例えば眼圧検査などの検査でありますとか疾病等の判断であれば、原則として医行為であり、医師等の資格を持たない者が業として行うことは法律により禁じられております。
厚生労働省といたしましては、無資格者による医療行為に対しては、国民の健康と安全を確保する観点から、関係機関と協力し、適切に対処してまいりたいと考えております。

○階委員 今のお話からすると、結局、今の眼鏡を売らんかながための検査なんというのは、厚労省は全く関係ないというような感じになると思います。そうすると、まさに甘利大臣が言われるところのぽてんヒットみたいな形になるかなと思うんですよ。
こういう悪徳的な商法の前提となるような検査については、これはやはり経産省がチェックするべきではないでしょうか、厚労省が何もできないと言っている以上。いかがでしょうか。

○甘利国務大臣 専門的な見地から、眼鏡をつくる場合にどういう検査が必要かということは、私どもの範疇というよりも若干所管が違うと思うんです。私どもの方では、事実に見合ったきちんとした対応をする。つまり、矯正が必要なのにいいかげんなものを、これで大丈夫ですと言って不良なものを販売したというのは私どもの方になると思うんです。
適正な視力を確保するためにどういう手続が必要かということは、私どもの所掌を若干超えているのかなという気もいたします。適正なものを適正な方法で販売するということに関しては、しっかりと対応していきたいと思っております。

○階委員 まさに縦割り行政だと思うんです。
そういったいろいろな官庁から消費者行政を所管する部署が集まって消費者庁をつくるやに、そういう構想があるやに聞いておるんですけれども、結局、そういうところが集まったところでこういう抜け穴はそのまま放置されてしまうんじゃないかなと思うんです。
その点について、大臣、何か御見解はありますでしょうか。

○甘利国務大臣 どこが所掌するかわからない、ぽてんヒット、ヒットというのかぽてんエラーというのかちょっとわからないんですが、それをなくすということは消費者保護の点から極めて大事だと思っております。
そこで、消費者庁がどういう形になるかというのは、いまだ議論をしているさなかでありますが、それぞれ、原課を所管するところは、その製品に対する情報をきっちり把握して、製品あるいは販売方法に問題がないかということをしっかりチェックする。同時に、省を越えてあるいはまたいでのような事案に関して、全体的に、消費者保護の情報をトータルとして把握するということも大事だというふうに思っております。
省庁間のはざまに落ちてしまうような問題について、そういう消費者庁構想で、省をまたいでかかわってくる問題について、しっかりと情報を把握して所管官庁に対応する、あるいは、所管がないと思われるようなものについてはそれを明らかにしていくという意味で、貢献できる仕組みであってほしいと思っております。

○階委員 次に、今回、うちの家内は、このままでは視力も乱視もよくならないというふうに言われて購入していたわけですけれども、実際のところ、それは虚偽であった。ただ、物自体、眼鏡自体に問題があったわけではなくて、眼鏡を購入する動機、そこが虚偽であった。
講学上、動機の錯誤と言われるケースでございますけれども、動機の錯誤については、私が調べたところ、消費者契約法には取り消し事由とはなっていなくて、特商法の方で取り消し事由になっているというふうに伺っていますが、実際のところ、この規定は使われていないようです。
どこに問題があるかというところでございますけれども、私が思うに、これを使おうとした場合に消費者側の立証責任が重い。この動機の錯誤に基づいてなぜ購入に至ったか、この動機があったとしても買うことはあったんじゃないかと。
ちょっとわかりづらくなってしまいましたけれども、要は、消費者の方でこの取り消し権を使うためにいろいろなことを証明しないと認めてもらえない、そういうようなことが背後にあって、取り消し権が使いにくくなっているんじゃないかと思うんです。
この点について、立証責任の転換など、法律の改正が必要ではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

○甘利国務大臣 特に、高齢者などが不実の告知をもとに事実上だまされて契約を結ぶ、その際に、消費者側に立証責任、立証負担が生ずる、それを立証せよということについて、弱い立場の方々にとってはなかなかつらいことである。その軽減をいかに図っていくかというのは、御指摘のとおり、極めて大事なことであります。
例えば、今回の法改正には過量販売契約解除の規定というのがありますけれども、消費者が、事業者が不実告知などの悪質な販売行為を行ったことを立証することなく、契約の解除を主張することを可能として、被害者が救済されやすい先進的な制度としております。この、見ればすぐわかるということについては、転換をさせるということはたやすいんだと思います。
一方、すべてに関して、不実の告知をしたということの立証と、では、事業者側に、不実の告知はしていませんということの立証というのは、先生も弁護士さんでありますから、いかに難しいかというのはよくおわかりだと思うんですね。でありますから、実態から、取り組みやすいところからこういうふうに組み込んでいった。
それで、悪いやつを懲らしめることはとても大事なんですが、副作用で、健全な事業者に物すごく負担が生ずるということで、健全な業務運営が著しく阻害されるということがあってはならない。
悪いのだけピンポイントで、きれいにクリアカットに摘発できるのであれば一番いいんですけれども、極力それができるようにして、副作用が健全な事業者に及ぼされない、過度な負担が生じて、健全な事業活動に物すごくコストがかかってしまうということにならないようにバランスをとるということが大事だと思っております。
過量販売のような、具体的にすぐ確認できて、健全な事業者であればそんなことはしないということが確認できるところについて、こういう立証負担を軽減するという手だてを講じたわけであります。
改正法の施行状況を踏まえて、引き続きいろいろな視点から検討していきたいと思っております。

○階委員 ちょっと内閣府に、今の動機の錯誤の点についてお聞かせ願いたいと思っているんです。
今、消費者契約法で動機の錯誤は取り消し対象になっていないんですけれども、やはりこれも含めないと、実際、悪徳商法というのは、霊感商法とかにも見られるとおり、商品の物自体について誤解があったというよりは、それを買わないとどうにかなるとか、そういう動機の部分で錯誤があって悪徳商法というのははびこっているという面もあるわけで、ぜひ消費者契約法の中に動機の錯誤の取り消しを認めるような規定を入れてほしいんですが、その点についてどうでしょうか。

○堀田政府参考人 お答えいたします。
現在の消費者契約法上では、不実告知あるいは不利益事実の不告知による契約の取り消しというのは、それぞれについて、重要事項に関してなされた場合にすることができるというふうにされております。
この重要事項でございますけれども、二つございまして、一つは、当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容に関すること、また二番目に、当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件に関するものということになっております。
それで、先生御指摘の動機に関する部分ですけれども、いろいろ裁判の例を見ておりますと、一部の裁判におきましては、こういったものも含むというふうに解された事例もございます。
内閣府といたしましては、こういう裁判例の動向とか、あるいは現場、消費生活相談事例とかそういったものを踏まえまして、重要事項の概念を拡張すべきかどうか検討してまいりたいというふうに考えております。

○階委員 消費者契約法でなかなか対応が難しいようであれば、やはりこれは厚労省の方も問題意識を持ってほしいと思うんですね。
これは単なる悪徳商法という問題だけではなくて、私の息子の場合でいえば、本来目がよかったにもかかわらず目が悪いことにされて、眼鏡をかけさせられて、眼科さんが言うように、ひょっとしたら眼鏡をかけて目が本当に悪くなっていたかもしれない。
そういうように、人の健康について虚偽の説明を行って不安を与えて、眼鏡などの医療機器を売りつけるような行為というのは、本当にとんでもない話であって、厚労省としても規制すべきではないかと思うんですが、この点について、厚労省としてはどういうふうに考えますか。

○中尾政府参考人 先ほどお話しいたしましたとおり、人体に危害を及ぼすおそれのある検査でありますとか疾病等の診断であれば、原則として医行為であり、医師等の資格を持たない者が業として行うことは禁じられております。
厚生労働省といたしましては、無資格者による医療行為に対しては、関係機関と協力して、適切に対処してまいりたいと考えております。

○階委員 全く意味のない答弁だと思います。
私が問題としているのは、医療行為と密接に、医療行為といいますか、人の体に悪影響を与えるような販売行為をしているわけですよ。そういうことについて、厚労省としては問題意識を持つべきではないか、その販売行為もちゃんと取り締まるべきではないかと言っているんですが、どうなんでしょうか。

○中尾政府参考人 薬事法におきましては、医療機器のリスクに応じた規制を行っておりまして、リスクの高いものから、高度管理医療機器、管理医療機器、一般医療機器となっておりますが、眼鏡用のレンズ、眼鏡というのは、最もリスクの低い一般医療機器に該当するものでございます。
その製造につきましては、厚生労働大臣の許可が要るという扱いになっておりますけれども、眼鏡の販売業につきましては、この一般医療機器につきましてはそのような規制はございません。
取り扱いにつきましては、今の眼鏡については、製造等の規制があるということでございまして、販売につきまして特段の規制があるわけではないということでございます。

○階委員 ぜひ、こういう事例もあるということをちゃんと認識していただいて、人の健康を守るのが厚労省の役割だと思うので、ちゃんと取り組んでいただきたいと思います。
それと、先ほど甘利大臣の方から、動機の錯誤を問わず、広く虚偽事実の説明についてもお話がございました。
今回のケースでは、実際、売買契約は解除されていますので、どのような眼鏡を業者が我々の方に売るつもりであったのかというのは定かではないんですけれども、私が推測するに、本来目がいい人に対して眼鏡を売るわけだから、もし目が悪い人用の眼鏡を売ったらば、かえって見えにくくなると思うんですね。だから、ひょっとしたら、空レンズといいますか素のレンズをつけた眼鏡を売って、ほら、よく見えるでしょうみたいな、まさに二重のあくどい行為をされかねないんじゃないかなというふうに思ったりするわけです。
仮に、よく見えるでしょうと言って空レンズを売った場合、この商品自体が、もちろん空レンズですから価値のないものなんですけれども、何か、私がきのう役所の人たちに聞いたところ、よく見えるでしょうと言って変なものを売ったとしても、実際によく見えている以上は、これは虚偽の説明に当たらないんだというような解釈があるようです。
何かそれもおかしな話であって、客観的に物の性質がいいかげんなものである以上、それ自体問題であって、よく見えるでしょうといったあいまいな言い方ではなくて、何を説明すべきかというときに、物の客観的な性質といいますか客観的な性能をちゃんと説明したかどうか。そして、その点について虚偽があったかどうかによって虚偽説明かどうかというのを判断すべきではないかなというふうに思うわけです。
さっきのような、よく見えると言って空レンズを売るようなケースについては、やはり虚偽事実の告知に当たるというふうに考えるべきと思うんですが、いかがでしょうか。

○甘利国務大臣 まず、今御審議をいただいている特商法というのは、特定商取引でありますから、一般的に店舗で商店が販売しているというようなことについては対象になりません、もうよく御存じだと思いますが。ただし、キャッチセールスとかアポイントメントセールスで店舗を利用する場合には対象になりますけれども、基本的には訪問販売等を指しているわけです。
そういう場合において、商品の性能であるとか品質について定量的に説明することは、可能であるならば、顧客の理解の上では望ましいことであると思っております。
しかし、商品やサービスの性能には、その印象とか使い勝手など、定量的説明になじまないものもあるわけであります。また、使用条件等によって効果、性能が影響を受けるものも多いことも事実でありまして、そうした実態にかんがみれば、数値など客観的性能を用いた説明をしない限り、不実を言ったことになるとの運用をすることは適当ではないと思われます。
つまり、そういう印象的なこともすべてなるということになると、極めてその説明が難しい。これは、数値的にこういう効果がありますというのを全然うそを言っていたというのであるならば明確になるのでありますが、感情とか印象とか言い回しについて限定してしっかり明確に規定するというのはなかなか難しいことだと思いまして、そういった意味で、その印象とか説明者の感覚とかいうことをとらえて対象とするというのはなかなか難しいかなというふうに思っております。

○階委員 よく見えるでしょうとかそういうことを言うのは別にいいんですけれども、それとは別に、やはり〇・四と判断しているわけですから、その〇・四の人に合う性質の眼鏡であるということをちゃんと示していただいた上で売ってもらわないと、売る場面になったら、よく見えるでしょうということで、最初の〇・四の判断とは切り離したような話にされてしまうと、後から責任を追及しようとしても、よく見えることには変わりないんだからという話になってしまって、これは本当におかしな話かなと思うわけです。
その辺については、解釈はどうなっているんでしょうか。それは問題ないんでしょうか、今のようなケースは。

○寺坂政府参考人 ただいま大臣の方から御答弁申し上げましたのは、一般的な数値基準あるいは客観的な基準ということで申し上げたわけでございますけれども、個々の事例におきまして、明らかに数字上の不実といいますかうそを言っているとか、あるいは度つきの眼鏡が必要なのか必要でないのかといったようなことについてのうそがあるとか、そういった個別のケースにおきまして虚偽、不実といったようなことは、それはあり得るんだろうと思います。
ただ、一般論で申し上げますと、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、一律に数値基準とかそういったものがないと不実というようなことはなかなか難しいのではないか、そういうことでございます。

○階委員 あと、事例の最後のところで、今回、解除に応じた理由が、虚偽の事実を告知したことによる取り消しということではなくて、レンズ破損という理由にして売買契約を解除し、またクレジット会社にはその旨報告して代金請求をストップする、そういうふうな処理をしているようなんですよ。
ということは、クレジット会社の方には、この問題の実態が全然伝わっていないわけですね。こういういいかげんな商売をやっていたという情報が全然伝わっていなくて、ということは、同種の事例が今後も起き得るということでございます。
私が思うに、こういう不正確な情報が伝わっているのでは、どんどん同じような事例が重なってしまうので、問題事例は情報蓄積を図っていくために、例えば特商法などで、店舗販売の部分なども含めて、販売業者から信販、クレジット会社への事故報告義務みたいなものを定めるべきではないか、真実はどういうことだったのかという事故の報告義務を定めるべきではないかと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

○甘利国務大臣 消費者トラブルを隠すということのために、合意による契約の解除を装うということはよくないことであります。
トラブルについて、消費者と販売事業者が円満に契約解除に至ること自体は問題ないと考えておりますが、そこで契約をめぐるトラブルについて一律に報告義務を課すということは、現時点ではちょっと無理があるのではないかと考えております。
また、正直な話、悪質事業者ほど正直な報告を期待するということは難しいというふうに考えております。悪質事業者とのトラブルの場合、消費者や相談現場の相談員の方々から、販売事業者のみならずクレジット会社に対しても連絡をしていただくということは、トラブルの円満解決の観点から有効だと考えておりまして、経済産業省といたしましては、この旨を消費者や相談員の方々に十分に周知してまいりたいと考えております。
ですから、いろいろなルートを使って情報を関係方面に伝達をさせるということについてはしっかりやっていきたいと思っております。
先ほど来の御質問で私どもが留意をしておりますことは、消費者保護の行政と、それから一方で取引の安定性への要請というのがあります、これをどうバランスさせていくかという観点から、トラブルの実態を踏まえていろいろと検討してきたし、これからも検討していく。
一方に完璧を期して、アリ一匹入れないようにするというと、片方の健全な取引が極めて萎縮されるということも勘案しなければいけない、両方うまくいくというのが一番いいのでありまして、そこの、取引の安定性と消費者の保護ということを高いレベルでバランスさせたいというふうに考えておりまして、それに向けていろいろと実態からの事案をしっかりと聴取していきたいと思っております。

○階委員 この審議の中でも多分、議論として出ていると思うんですが、訪問販売とかだけでなくて店舗販売についても法律の適用範囲を広げるべきであろうとか、あるいはクレジットについても、複数回払う場合だけではなく翌月一括払いのようなケースについても適用すべきであろうとか、そういうような意見もあるかと思います。
まさに今回のようなケースが実際にあるわけでございますけれども、きょうのこの事案なども見ていただいた上で、その適用範囲の問題、店舗販売に広げたり、あるいは一括払いについても広げたり、そういったことについて、大臣、お考えいかがでしょうか。

○甘利国務大臣 一般店舗販売というと、いわゆる地域の商店街になるわけですね。商店街は、地域の信頼性なくしてやっていけないはずなんであります。一般店舗販売についてぎりぎり規制をしていくということになると、それでなくても地域の商店街が疲弊しているという中に、過度の負担を負わせることになりはしないか。取引の安定性について、もちろん、消費者保護をできるだけ図るということはいいことなんでありますけれども、それの副作用が過度に起きてしまわないかということ等々を勘案しながら、両者がバランスするようにしっかり取り組んでいきたいと思っております。
法改正後も、法の期待することがきちんと確保されたか、あるいは、思わぬ落とし穴がなくはないかということをしっかりと監視しながら、取引の安定と消費者保護、両方が高度なバランスをとれるように目配り、気配りをしていきたいと思っております。

○階委員 私が提示した事案についての質疑はここまでで終わりますけれども、そもそも論として私が思いますに、悪徳業者と言われるものについても二種類あるような気がします。一つは、法に触れなければ何をやってもいいという法の抜け穴を探すような業者と、もう一つは、法を破ってもばれなければいいという業者であります。
これまでの国の対応というのは、今回の改正も含めてですが、どちらかというと前者の、法に触れなければ何をやってもいいという人たちへの対策として、法の抜け穴をなくしていくというのが主眼であったように思います。しかしながら、市場競争が激化する中で、モラルの低下が非常に進んでいるのではないかということを危惧しています。こういった中で後者の、法を破ってもばれなければいいというような業者もふえていると思うんです。
こういったものについての対策としては、法の抜け穴をなくすというだけでは本当に意味がなくて、監督を厳重にするということも大事でしょうし、ただ、監督を厳重にして行政処分を食らっても、それでも、廃業になっても利益さえ残ればいいというような考えの、さらに悪徳な業者もいます。
そういったことについて、究極的には、違法収益を剥奪する制度、違法なことをしてもうけた分については全部取り上げるような制度、こういったことを創設するのがやはり最終的には必要ではないかと思うんですけれども、大臣、その点についてお考えはいかがでしょうか。

○甘利国務大臣 悪質商法によって被害を受けた消費者の損害の回復を図る上で、返還金の原資となる事業者の財産一般の保全を図って、その資産を恣意的に散逸させないとの観点は重要だと思っております。
その一方で、その資産の全体を凍結するということは、当該事業者の経済活動を停止させることを意味するわけであります。破産や民事再生手続に入るような場合でない限り、民事手続としては一般的には認められないところであります。
悪質商法被害者救済のために、事業者に対して、資産凍結などを強制的に行わせる制度を導入すべきかどうかについては、まず、事業者自身の経済的自由の問題に加えまして、同じ事業者に対する他の債権者の権利保護とのバランスなど、非常に難しい問題があるわけであります。消費者法制、民事法制、破産法制全体の問題として慎重な議論が必要な問題と認識をしております。
御指摘はよくわかりますが、そういうもろもろの、つまり、一人の被害者に対する行為が新たな被害者を生まないようにということ等をしっかりと勘案しながら検討していくべき課題だと思っております。

○階委員 ぜひ、今後御検討いただければと思います。
きょうは財務省にも来ていただいておりますので、ちょっと時間も足りなくなってきたので質問させていただきたいんですが、今、本当に違法な商売をしてもうかったお金を最終的に取り上げることは必要であるということは、大臣もその必要性を認めていただいたのでございます。
その違法収益を業者から取り上げる上で、現存するものだけではなくて、過去に違法な商売で上げた所得に対して税金を取っていたものを、被害者保護のためにそれを還付する制度とか、あるいは、ちょっと観点は違いますけれども、違法業者に対する損害賠償請求権と租税債権が競合した場合に、損害賠償請求権を優先させて被害者保護を図るといった制度について、財務省におかれても、この被害者問題、いろいろ多々発生している中で検討していただければなと思うんですが、財務省、いかがでしょうか。

○川北政府参考人 お答え申し上げます。
二点御指摘がございました。一つは、違法収益による所得課税を取り戻すという点でございます。
これは、委員も御案内のとおり、所得課税を行う場合に、税法上は、その収益が他の違法行為から得られたものかどうかというのにかかわらず、税法の規定に該当いたしますと所得課税が行われるということになっております。
これを、所得が生じているにもかかわらず被害者救済のために返還するという制度ということになりますと、私どもの立場から見ますと税法の範疇をちょっと超えたものでございますので、それは、被害者救済制度ということで、取引規制の根拠法との関係でよく御議論をいただく必要があるのではないか。それについての基本的なことは先ほど大臣から御答弁があったように存じております。
それから、租税債権と損害賠償請求権との関係でございますが、これは、国税徴収法におきましては、租税債権の公益性、特殊性の観点で一般的に優先権が認められておりますが、その上で、具体的な優先関係につきましては、私債権間の優先順位を前提といたしまして、抵当権により担保されている債権と租税債権の優劣を同等といたしまして、その上で、その被担保債権に常に優先する私債権は租税債権にも優先する、被担保債権に常に劣後する私債権は租税債権にも劣後するというような仕組みで国税徴収法は規定されてございます。
したがいまして、税法の方から見ますと、損害賠償請求権と租税債権との優先関係という点につきましては、損害賠償請求権を私法上の優先順位の中でどういうふうに位置づけるかということと関係してまいりますので、そうした観点からも御検討が必要かなというふうに考えているところでございます。

○階委員 済みません、時間の関係で副大臣の方々にはちょっと質問できません。失礼しました。
それでは、きょうはこれで終わりたいと思います。本日は、ありがとうございました。