18日、河井克行前法務大臣が公職選挙法違反の容疑で妻の河井案里氏と共に逮捕されました。昨年の参院選において、地方議員ら延べ94人に2570万円を配って買収した疑いです。前法務大臣が逮捕されるのも、国会議員の夫婦が同時に逮捕されるのも、前代未聞です。このような大臣を抱えていた法務省にとっても由々しき事態です。

一方、安倍首相には、総理大臣として河井法務大臣を任命した責任があります。同時に、自民党総裁として他の候補者の10倍にものぼる1億5千万円の選挙資金を投じるなど、妻の案里氏の当選を支援した責任があります。いつものように「任命責任は自分にある」と言うだけで何の責任も取らずに済ませることは、決して許されません。

法務省では、ほかにも重大な事案がうやむやになっています。まずは、「検察官の定年延長は認められない」という、検察庁法に関する長年の政府解釈を突然変更した件。森法務大臣は、私への国会答弁で、この「解釈変更」が行われていなければ黒川氏の定年延長は違法だったと述べました。しかし、「解釈変更」が適時適切になされたことを示す証拠はありません。むしろ、従来の政府解釈を知らずに黒川氏の定年延長をしてしまい、これをごまかすために「解釈変更」したと嘘をついた可能性が十分にあります。仮にそうであれば、法務省だけでなく、黒川氏の定年延長を決めた安倍政権が違法行為を犯したことになります。

次に、前東京高検検事長の黒川弘務氏が賭け麻雀を繰り返し行っていた件。黒川氏は「他に代わる人がいない」という理由で、現在の検察制度の下で初めて定年延長が認められた人物です。「複雑困難な事件」の解決に取り組んでいると思いきや、ひまを持て余したのか、緊急事態宣言で外出自粛が求められていた1月余りの間に7回も新聞記者らと密会。うち少なくとも4回は賭け麻雀を行っていました。その処分につき、民間の新聞記者が1か月停職の懲戒処分だったのに対し、黒川氏は、賭博罪を訴追する検察組織のナンバー2だったにもかかわらず懲戒処分を免れています。おまけに、5900万円もの退職金が通常通り支払われました。かつて法務省の事務方トップであり、「身内」の黒川氏に対して、満足な調査もせず甘過ぎる処分を図った法務省に、もはや法を語る資格はありません。検察と法務省への信頼を回復したければ、調査と処分をやり直し、黒川氏に退職金を返還させるべきです。

振り返れば、法務省が法をないがしろにする「法無省」に陥ったきっかけは、安倍政権の黒川氏に関する異例の人事でした。河井氏のみならず、黒川氏の問題でも安倍首相の任命責任は極めて重大です。今通常国会は、野党の会期延長要求にもかかわらず、安倍政権への責任追及を嫌がる与党の反対で17日に閉会しました。国民の命と暮らしをコロナから守ることはもちろん、法務省が法と正義を守るようにするためにも、国会は開き続けるべきです。