今般の117兆円規模の政府緊急経済対策のうち、26兆円は税金や社会保険料の納付猶予、45兆円は政府系金融機関による特別融資と民間金融機関による制度融資を実質無利子無担保とする措置です。これらは、「コロナ」で業績が落ち込んだ事業者の方々にとって、目先の資金繰りには役立つでしょう。ただし、将来の支払いは逆に増えることとなり、コロナが収束した後も、事業者は資金繰りに頭を悩ませることになりかねません。

野党側からは、かねてより、コロナの影響による収入減少を補うべく、返済不要の給付金を支給するよう政府に求めてきました。しかし、政府が今回の補正予算に盛り込んだ「持続化給付金」は、中堅・中小企業で上限200万円、個人事業主で上限100万円に過ぎません。これでは、将来への不安が消えない事業者の方が多いと思います。

そこで第三の方法として、政府系金融機関による「出資」が考えられます。ただし、「出資」とは言っても、議決権を持つ株主として出資するわけではありません。議決権を持たない「優先株」や「永久劣後ローン」という形での「出資」なので、経営の自由は守られ、通常の融資のような返済義務もありません。政府系金融機関の「出資」があることで信用力が高まり、いざという時に他の民間金融機関からの融資を受けやすくなります。この案は、三井住友信託銀行の社長、会長を歴任された私の高校の大先輩である高橋温氏も提唱されています。

そして、これに近い仕組みは既にあります。政府系の日本政策投資銀行(政投銀)が行っている「特定投資業務」です。政投銀と政府が半々ずつ拠出する勘定から、地域活性化や企業の競争力強化に役立つ取組みを行う企業に対し、「出資」しようというものです。

政府は、「特定投資業務」を5年間の期間限定で始めましたが、4年経過の今年3月末時点で、実績は目標の5千億円を大きく超えました。これを受け、政府は業務期間を5年延長する法案を国会に提出し、今回の補正予算でも1千億円の拠出金を計上しました。過去の拠出分の残額も併せ、今後「特定投資業務」で「出資」できる金額は、5千億円を上回ります。

22日の財務金融委員会で、私はこの法案に関する質疑を行い、「特定投資業務の枠を拡大するのであれば、中小企業に永久劣後ローンを提供すべきではないか」と、政投銀の渡辺社長と麻生財務大臣に提案しました。渡辺社長は「事業者や地域金融機関等と連携しながら、成長資金を目的とする特定投資業務の要件を踏まえて、要請に応じて永久劣後ローンを含めたニーズに対応していきたい」と答弁。麻生大臣も「資金繰りを今、目先でやっているが、フローの話だけでなくストックの話も考えろ、という点も配慮せねばならぬのは確かだ」と今後に期待が持てる答弁でした。実行に向けて後押ししていきます。