今国会では、毎月勤労統計について、昨年1月から賃金の高い大企業の割合をこっそり3倍にし、賃金が大幅に伸びたように偽った違法行為をはじめ、安倍政権に都合のよい数字が出るような方向で、次々と政府の統計が変えられてきたことが明らかになっています。

総務省が毎月公表している「家計調査」もその一つです。これは世帯ごとの収入や支出がどうなっているかを把握するための統計です。家計調査は、全国から無作為で抽出された約8000世帯が総務省指定の「家計簿」を記入し、そのデータをもとに作られています。

その「家計簿」の様式が昨年1月から大幅に変わり、①収入の記入が世帯員ごととなり、②口座入金による収入を記入するページを新たに設け、③ポイントを利用して商品を安く購入した場合、支出欄には実際に支払った金額ではなくポイント利用分を合わせた金額を記入すると共に、収入欄には利用ポイント額を記入するよう、記入要領に明記されました。

私は、この変更によって従来よりも家計調査の収入や支出がいくら増えるのか、18日と21日の予算委員会で政府に尋ねました。すると、家計調査の実収入(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)は年間で約51万円(+8.0%)、消費支出(二人以上の世帯)は年間で約4.6万円(+1.4%)も増えることを認めました。実態は何も変わっていないのに、「家計簿」の様式や記入方法を変えるだけで家計調査の数字がこれだけ変わるのです。

18日の質疑では、安倍首相に対し、「実態を見誤るような統計の数字の出し方はおかしいのではないか」と問い質したところ、「根本的な考え方についてはまさにそのとおり」としつつ、「時代の変化の中において、より正確にそれをつかむための改善は常に行わなければならない」と答弁。

しかし、今回の家計調査の変更が「時代の変化を正確につかむため」のものなのか、極めて疑問です。というのも、今年10月に消費増税とセットで導入される予定の「軽減税率」によって、1.1兆円税収が減ると財務省は見積もっていますが、この金額は変更前の家計調査の数字ではじき出したものです。新しい家計調査の数字が「正確」なら、これを反映して減収額を計算するのがまっとうなやり方です。

ちなみに、私の試算では、仮に新しい家計調査の数字で試算すれば、さらに数百億円は税収が減り、その分財政が悪化すると予想されます。時代の変化を正確につかむための統計変更は必要でしょうが、政権に都合のよい数字を並べるための統計変更なら有害無益です。国家の重要な統計が「大本営発表」とならないよう、引き続き予算委員会で追及を続けます。