11日、総務省は「ふるさと納税」を見直すための法改正を行う方針を表明しました。ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付をするとその金額から2000円を引いた額が自分の住む自治体に納める住民税から控除される仕組みです。

ふるさと納税と呼ばれますが、「ふるさと」以外の自治体も選べ、「納税」ではなく「寄付」なので返礼品を送ることもできます。そこで、財政状況の厳しい自治体は、より多くの人から継続的にふるさと納税をしてもらえるよう、返礼品の充実に力を入れることになります。

この返礼品が行き過ぎだとして、総務省は、昨年から2度にわたり自粛を要請しましたが、あまり効果が見られないため法改正に踏み切るものです。法改正後は返礼品が寄付額の3割を超えたり、地元と無関係だったりする場合は、税の優遇措置がなくなりそうです。

確かに、返礼品にある程度の制限を設けないと自治体に入る寄付額が目減りしますし、他の自治体とふるさと納税を奪い合うための「返礼品競争」が過熱し、負け組の自治体はさらに財政が厳しくなってしまいます。今回の法改正はやむを得ないでしょう。

ただし、見過ごしてはならないのが、高額かつ多様な返礼品を用意してまで「ふるさと納税」に頼らざるを得ない、岩手など地方の財政の厳しさです。地方自治体の財源は、国からの交付金・補助金と地方独自の税金が大半を占めますが、都市部への人口流出と少子化で人口が減れば地方税も減ります。

加えて、企業が地方に納める税金は本社がある自治体の収入になります。最近は地元の商店街が減り、大手のスーパーやコンビニ、あるいはインターネット通販などで買い物をする機会が多くなりました。そこで私たちが使うお金から大手企業は利益を得て、本社がある東京など都市部で地方税を納めています。

昨年の数字で見ると、企業などが自治体に納める「地方法人二税」の総額は、東京都が岩手県の3.6倍に達しています。東京都では地方税収を使い切れず、近年は3千億円以上も貯金しています。一方、岩手県内の市町村長からお話を伺うと、上下水道など老朽化した施設の更新や、高齢者の増加等による医療・介護サービス維持のためのお金が不足しています。

ふるさと納税の「返礼品競争」を避けたいのであれば、法改正というムチだけでなく、「地方法人二税」の再配分など地方財源を確保するためのアメも必要です。都市と地方の税収格差を招く税制をこのまま放置するなら、「ふるさとNO税」の誹りは免れません。